滑膜ー腱付着部複合体は滑膜炎の病因に関与するか
Nature Reviews Rheumatology
2008年2月1日
Is the synovio‒entheseal complex involved in the pathogenesis of synovitis?
Benjamin とMcGonagle は、腱付着部とそれに隣接した滑膜がひとつの機能ユニットを形成することを提唱し、滑膜- 腱付着部複合体(synovio–entheseal complex:SEC)と名付けている。彼らは、60 遺体(男性35 体、女性25 体、平均84 歳)の腱付着部を検討し、変形性関節症および炎症性関節炎に伴う滑膜炎 の発生に、SEC に加わる生体力学因子が何らかの役割を果たしている根拠が存在するか否かを評価した。
検討した腱付着部のうち、82%には滑膜が存在しており、SEC を形成していた。炎症性関節炎におけるパンヌスと同様に、滑膜が一部の腱付着部位に侵入していた。検討したSEC には、線維軟骨における 細胞のクラスター形成と、細胞の肥大化、亀裂、線維化および層間剥離など、病理組織学的な異常が多く認められた。これらは変形性関節症の関節軟骨にも認められる異常である。このような変性変化は、 大型の腱付着部で最も顕著であり、炎症性細胞浸潤を伴う壊死領域なども認められた。炎症性細胞の浸潤、表層細胞の増殖および滑膜絨毛の形成など、検討したSEC の85%に滑膜の炎症性変化が存在した。 SEC で認められた炎症性細胞の大半はリンパ球であった。主に10 個の細胞からなる少数の炎症性細胞集団は、腱付着部の付着部位の73%に認められ、しばしば拡張した細静脈付近に認められたが、このよ うな炎症性部位が、SEC のない腱付着部10 カ所中8カ所にも存在したことから、炎症性浸潤は単なる滑膜炎の二次的な結果ではないと著者らは結論づけた。
病理組織学的観察結果に基づき、脊椎関節炎および変形性関節疾患の滑膜炎の病因に、SEC が重要な役割を果たしている、と著者らは述べている。
doi:10.1038/ncprheum0690
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