Research Highlights

低酸素状態は幹細胞からの機能性軟骨形成を促進する

Nature Reviews Rheumatology

2009年3月1日

Hypoxia enhances production of functional cartilage from stem cells

組織工学により幹細胞から軟骨を形成することは難問である。正確な組織を形成するには、さまざまな要素を調節しなければならない。軟骨はでは低酸素状態にあることから、KoayとAthanasiouは、ヒト胚幹細胞(hESCs)を低酸素状態に置くことが、組織工学を用いたでの軟骨形成に有益かどうかを調 べた。

KoayとAthanasiouは、低酸素状態(2% O2)または酸素正常状態(20% O2)で、胚様体の軟骨細胞への分化(3 週間)とその後の分化細胞の組織工学による組 織形成(4週間)について検討した。胚様体および組織工学で形成された組織について、細胞、形態、生化学、生体力学的な特徴を調べた。

酸素正常状態と比較して、低酸素状態では、細胞分化によるI 型、II 型コラーゲン(それぞれ最大2.9倍、最大3.4倍)およびグリコサミノグリカン(最大1.9倍) の合成が促進され、このため軟骨の生体力学的機能が向上した。組織工学による組織形成段階では、酸素正常状態のほうが低酸素状態よりも、構成物の厚みや重量が増した。酸素利用率により、細胞でのCD44、CD105および血小板由来増殖因子受容体α(これらは著者らが軟骨形成マーカーとして同定した)の発現にも変化が認められた。

低酸素状態での分化によって、軟骨細胞外基質の合成が促進され、軟骨構成物の生体力学的機能が向上するという発見は、損傷または罹病した軟骨を、幹細胞由来の組織で置き換えるための重要な一歩である、と著者らは結論づけている。

doi:10.1038/ncprheum0997

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