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結合組織疾患 :全身性硬化症による損傷を元通りにする

Nature Reviews Rheumatology

2009年4月1日

Connective tissue disease Undoing the damage caused by systemic sclerosis

全身性硬化症(SSc)でみられるさまざまな重篤な症状は、皮膚やその他の臓器の線維化によるものであり、この疾患の病態と死亡に大きく関与している。SSc患者の多くは、すでに顕著な組織線維化が生じてしまった後になってリウマチ専門医を受診する。そのため、この疾患に対する抗線維化薬は、線維化の発現を防ぐだけでなく、進行した肥厚の退縮を誘発するものでなくてはならない。この点に関し、Jörg Distlerらは、チロシンキナーゼ阻害薬であるメシル酸イマチニブが、SSc患者の有効な治療薬となる可能性があることを非臨床試験で示した。

このグループや他のグループのこれまでの研究で、イマチニブは、さまざまな組織の炎症誘発性の実験的線維化の発現を阻止することが示されていた。例えば、ブレオマイシン誘発性皮膚線維化モデルでは、線維化促進物質の使用前にイマチニブの投与を開始した場合、線維化の発現が阻止された。このマウスモデルは炎症プロセスにより線維化が惹起される早期SScのモデルである。「SScでは、激しい炎症は主に疾患の早期に限定されており、晩期で生じるのはまれである」とDistlerは説明する。「ブレオマイシン誘発 性線維化などのモデルは早期SScのモデルとなるが、後期SScのモデルとするには適切でない」。Distlerのチームは、リウマチ専門医が直面する臨床状況をよりよく反映する進行したSScの非臨床モデルを用いてイマチニブの有効性評価に取り組んだ。

皮膚線維化の発現が炎症プロセスとはほぼ独立している、SScのtight skin 1遺伝子マウスモデルにおいて、イマチニブは皮膚肥厚をほぼ完全に阻止した。休止期の線維芽細胞から筋線維芽細胞(SSc線維化における重要なエフェクター細胞)への分化も、大幅に阻害した。対照マウスの筋線維芽細胞数は、イマチニブ投与マウス(筋線維芽細胞数は正常)に比べて3倍増加した。イマチニブ投与tight skin 1マウスの皮膚肥厚は正常レベルであり、皮下組織肥厚も、対照マウスに比べて大きく低減した。別の実験で、研究者らは、ブレオマイシン誘発性線維化の改良モデルを用いて、進行した線維化の退縮誘発におけるイマチニブの有効性を明らかにした。このモデルでは、線維化促進物 質を長期間投与し、イマチニブ投与中も継続して投与したが、それでもイマチニブは、さらなる細胞外マトリックスの蓄積を妨げた。事実、イマチニブ投与後の皮膚の肥厚は、投与前レベルよりも少なかった。したがってイマチニブは、線維化の進行を止めただけでなく、すでに存在する線維化の退縮も誘発したのである。

腫瘍増殖因子β(TGF-β)および血小板由来成長因子(PDGF)は、線維芽細胞活性化、そしてSScにおける細胞外マトリックス蛋白質の過剰蓄積に重要な役割を果たす。イマチニブは、SScにおける2 種類の主要な線維化促進経路すなわちAbelsonキナーゼ(c-Abl)(TGF-βの重要な下流シグナル伝達分子)およびPDGF受容体の両方のチロシンキナーゼ活性を標的として阻害する。これらの経路は、SScの後期の非炎症性段階での線維化に重要であると考えられている。これらの段階では、組織線維化には、炎症細胞からの線維化促進メディエータの放出ではなく、細胞外マトリックス蛋白質の持続的な過剰産生が関与している。研究者らは、マトリックスの分解の促進ではなく、イマチニブがde novoコラーゲン合成を阻害することで進行した線維化の退縮を誘発しているという仮説を立てた。

イマチニブは、さまざまなタイプの癌に対する経口治療薬としてすでに広く使われており、本研究はイマチニブがSScにも有効である可能性を示している。この仮説は、腎性全身性線維症の少数の患者に用いて効果が得られたという報告に裏付けられている。これまでの研究の結果と併せて、本研究は、イマチニブがSSc患者の治療に有望であることを示している。Distlerは、これらの結果が「イマチニブが進行した線維化の退縮を誘発し、後期の非炎症性段階にあるSScの患者を対象とした臨床試験の候補薬となり得ることを示唆している」と結論づけた。

doi:10.1038/nrrheum.2009.56

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