IL-33:関節炎治療の新たな標的分子候補
Nature Reviews Rheumatology
2009年5月1日
Arthritis IL-33 another candidate for arthritis
IL-1 のオーファン受容体であるT1/ST2のリガンドとしてインターロイキン(IL)-33 が同定されたが、Palmerらはこれに続いて、ヒトおよびマウス関節におけるIL-33の発現解析を行って実験的関節炎におけるこのリガンド‐受容体ペアの役割を検討し、Arthritis & Rheumatismで報告した。
これまでに関節リウマチ(RA)患者の滑膜内皮細胞で、IL-33のメッセンジャーRNA(mRNA)が発見されている。Palmerらは、RA患者の滑膜および正常滑膜組織において、免疫組織化学分析によりIL-33 蛋白質の検出を行った。IL-33は培養ヒトRA滑膜線維芽細胞では少量発現していたが、正常ヒト関節軟骨細胞では発現がみられなかった。この滑膜線維芽細胞におけるIL-33の発現は、IL-1βまたは腫瘍壊死因子(TNF)により強く誘導される。一方、コラーゲン誘発関節炎(CIA)マウスでは、初期の炎症相にかけてIL-33 mRNAが増加することが観察された。抗ST2阻止抗体はin vitroおよびin vivoでIL-33活性を抑制するが、これをCIAマウスモデルの関節炎発症時に投与すると、関節炎の重症度が低下し、特に関節の炎症および軟骨びらんが抑制されることが示された。
抗ST2抗体を投与したCIAマウスの排出リンパ節から分離された細胞は、コントロール抗体で治療したマウスに比較して、インターフェロン(IFN)-γの産生が著明に 減少していた。これらの細胞のIL-17、IL-10、腫瘍壊死因子の産生も抑制されたが、その程度はわずかであった。最後に、Palmerらは、抗ST2抗体で治療したマウ ス足関節由来全RNAにおける62種類の転写産物の発現量についてアイソタイプコントロール抗体を投与したマウス由来RNAのものと比較した。その結果、核因子κB活性化受容体リガンド(RANKL)mRNA量の有意な低下と、その他の炎症関連遺伝子の転写産物量が減少する可能性が明らかにされた。
これらの結果は、Leungら(2004)による研究結果と一致している。Leungらの研究では、可溶性ST2がCIAマウスの関節炎を抑制し、CIAマウスの免疫応答を調節することが示されている。Leungらの研究はIL-33同定前に実施されたものであるが、この抑制効果は可溶性受容体によるIL-33の中和が原因であると考えられる。以上のことから、関節炎の病因に関与する分子の候補として、さらに局所産生IL-33を追加する必要がある。
doi:10.1038/nrrheum.2009.70
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