レフルノミド誘発肺疾患の脅威
Nature Reviews Rheumatology
2009年6月1日
Therapy The threat of leflunomide-induced lung disease
肺有害事象(PAE)はレフルノミド療法の稀ではあるが重篤な合併症である。最近完了した2件の臨床試験の結果から、レフルノミド誘発肺障害の有病率、リスク因子、臨床像について新たな情報が得られており、関節リウマチ(RA)患者における本DMARD使用のガイドラインにも影響を及ぼすと考えられる。
日本で実施された臨床試験では、RA患者5,054例から得たデータをもとに、レフルノミド誘発間質性肺疾患(ILD)のリスク因子がいくつか特定された。「日本には、新たに承認された抗リウマチ薬を対象とする独自の市販後調査システムがあり、日本の製薬会社は厳格なファーマコビジランス(pharmacovigilance)を支持している」と、日本リウマチ学会を代表して試験を実施した猪熊茂子は説明する。「2003年9月のレフルノミド市販開始以降、レフルノミド療法を受けることになったRA患者はすべて、事前登録のうえ24週間モニターした」。
全体として、コホートの5,054例のうち61例(1.2%)がILDを発現した。多変量解析により、ILDの既往、喫煙、低体重(< 40kg)、loading doseの投与がレフルノミド 誘発ILD の独立したリスク因子として特定された。「レフルノミド誘発ILDの最も重要なリスク因子はILDの既往であり、オッズ比は8.17であった」と猪熊は言う。
2004年1月に安全性に関する通知が発行されて以降、ILDの既往を有する患者にレフルノミドが処方されることが少なくなったため、コホートにおけるILD発症率は次 第に低下してきている。安全性に関する通知には言及されていないが、loading doseの投与も減少した。
一方、英国の研究グループによる研究では、RA患者におけるレフルノミド誘発肺炎について、既発表症例32件(日本の6件を含む)の臨床的特性が再検討された。 文献および臨床ガイドラインにおける情報の不足が明らかになったため、後ろ向きの再検討が行われる運びとなった。
この英国の研究の結果、日本の研究グループの結果を確認する形で、ILDの既往がレフルノミド誘発PAEの重要なリスク因子であることが明らかにされた。さらに、筆頭著者であるBatsi Chikuraは、「これは、レフルノミド誘発肺炎の臨床症状にばらつきがあることを示した初の試験である」と述べる。その結果から、このばらつきの一部が予後指標となる可能性が示されている。Chikuraによれば、「死亡した患者の臨床像は、ILDの既往、高分解能CTによるスリガラス様陰影、組織検査によるびまん性肺胞損傷であった」。
通常、ILDはレフルノミド療法開始後20週間以内に発現するが、その時期はいくつかの要因に左右される。loading doseの投与を行った患者およびILDの既往を有する患者は、早期(12 週間以内)に症状を発現する。さらに、髙分解能CT像では、スリガラス様陰影のほうが蜂巣状陰影より早期発症に関連が高かった。
前述の臨床像だけでなく、メトトレキサート誘発肺炎の既往も死亡に関連する。日本の研究のコホートにおける生存者および非生存者の臨床像と検査所見を比較することにより、レフルノミド誘発障害における生存予測因子の解明が進むものと思われる。
レフルノミド誘発PAEの頻度は高くないが、臨床医は、これらの生命を脅かす合併症の特徴を認識しておく必要がある。
doi:10.1038/nrrheum.2009.39
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