骨形成におけるNFκBの予期せぬ影響
Nature Reviews Rheumatology
2009年8月1日
Unexpected effects of NFκB in bone formation
核因子κB(NFκB)が、破骨細胞の分化および骨吸収の促進に重要な役割を果たすことはよく知られている。今回、Jia Changらにより、この免疫転写因子が骨形成に関わる成熟骨芽細胞の機能を阻害することが示された。さらに、骨粗鬆症の実験マウスモデルにおいて、NFκBの特異的阻害により骨形成が促進され、骨量減少に対して保護作用を示すことが明らかになった。
成熟骨芽細胞におけるNFκBの影響を検討するため、骨芽細胞特異的骨γ- カルボキシグルタミン酸含有蛋白質2(Bglap2 )プロモーターを用いて、IκBキナーゼ(IKK)を特異的に発現するトランスジェニックマウスを作製した。2週間後の組織形態計測分析により、Bglap2 -IKKマウスではその野生型同腹仔に比べて海綿骨量の増加および骨形成速度の上昇が明らかになった。さらに、骨芽細胞および破骨細胞の数は、いずれのタイプのマウスでも同等であり、骨吸収および破骨細胞機能のマーカーである酒石酸耐性酸性ホスファターゼ5bの血清濃度も同等であった。これらの結果から、NFκBの阻害は、破骨細胞機能に影響することなく骨芽細胞機能を亢進することが示唆される。こうした骨形成促進作用は、Bglap2 -IKKマウスにみられるFos関連抗原1(Fra1)発現の増加により説明されると考えられる。
次に著者らは、卵巣摘出Bglap2 -IKKマウスにおいて骨形成が維持されるかを検討した。マイクロCTにより、海綿骨における骨密度の低下が野生型では40%であったのに対し、Bglap2 -IKKマウスではわずか12%であることが明らかにされた。さらに、卵巣摘出マウスでは、腫瘍壊死因子およびインターロイキン1などの炎症促進性サイトカインがNFκBを活性化し、骨芽細胞機能の抑制および骨形成の阻害が生じることも示された。
著者らは、本研究により今後の骨粗鬆症治療の改善を期待している。「現時点で、骨粗鬆症に使用されている多くの薬剤が骨吸収阻害薬であるが、骨量の増加や回復はできない」と、主要研究者であるCun-Yu Wangは言う。「したがって、骨吸収を阻害するだけでなく新規骨形成を促進するような薬剤を同定すれば、治療における大きな進歩になると考えられる」。
doi:10.1038/nrrheum.2009.130
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