アディポネクチン濃度とTNF阻害
Nature Reviews Rheumatology
2009年10月1日
Adiponectin levels and TNF blockade
炎症性関節炎患者において、腫瘍壊死因子(TNF)阻害薬療法が心血管系リスクに及ぼす影響の機序は明らかになっていない。しかしながら、新たな研究によれば、TNF阻害薬が脂肪細胞ホルモンであるアディポネクチンの血中濃度に作用している可能性は低い。
「アディポネクチンがインスリン感受性に関連し、糖尿病のリスクを低下させることは周知の事実であるが、このほかにも、抗炎症作用を有し炎症パラメータと逆相互作用を示すことが知られている」と、本研究の責任著者であるMike Petersは述べている。現在までのところ、炎症を抑えることによって、炎症性関節炎患者の循環血液中アディポネクチン濃度が上昇するかどうかについては最終的に証明されていない。
この疑問に答えるために、著者らは、onerceptのプラセボ対照比較研究を行った乾癬性関節炎患者126例およびアダリムマブの前向き研究を行った関節リウマチ171例から得られたデータを解析した。ベースライン時に測定した心血管疾患リスクに対するいくつかの代謝マーカーと、アディポネクチン濃度は、予測通りの相関を示した。
Onercept療法では12週間後、アダリムマブ療法16週間後にアディポネクチン濃度を測定し、ベースラインからの変化を調べた。Petersによると、「いずれの研究においても、炎症マーカーと疾患活動性が大幅に低下したにもかかわらず、血中のアディポネクチン濃度には変化が認められなかった」。さらに、アディポネクチン濃度の変化とC反応性蛋白値の変化の間にも相関はみられなかった。この結果から、炎症状態においてアディポネクチンは重要な役割を果たしていないことが裏づけられた。
「これらのデータは、この問題に答えるための最も信憑性の高いデータであり、アディポネクチン濃度は全身性炎症により調節されないことが示唆された」とPeters は述べている。
doi:10.1038/nrrheum.2009.191
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