PI3Kを標的としたプロドラッグは治療薬としての可能性がある
Nature Reviews Rheumatology
2009年10月1日
Prodrug targeting PI3K shows therapeutic potential
関節リウマチ(RA)の複雑性は、キナーゼが関与したシグナル伝達ネットワークが共通している数種の免疫細胞型が関与することに起因している。炎症反応においてはホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)が特に重要であり、PI3K阻害薬であるwortmanninは確立された抗炎症特性を有している。Stangenbergらは、炎症性関節炎マウスモデルを用い、wortmanninの新規徐放性製剤についてPI3Kを抑制する治療薬として利用できる可能性を実証することに成功した。
本研究のリーダーであるUmar Mahmoodは、「wortmanninの問題は、治療係数が低いことと、血中活性半減期が短いことである」と説明している。そこで、研究者らは、wortmanninを緩徐に放出する新規の自己活性化viridin(SAV)プロドラッグを用いた。Mahmoodは、「放出後に生じる標的組織における活性型wortmanninの一定レベルでの持続的な生成は、臨床に適用可能な投与方法を用いてwortmanninの強力な抗PI3K効果をもたらしうる」と続けている。
Stangenbergらは、K/BxNマウス血清の注入による関節炎の誘導と同時にSAVを投与した場合(予防モデル)、用量依存的に足関節腫脹が低減することを示した。組織学的分析により、軟骨のびらんおよび炎症を伴わないことが明らかにされた。研究者らは画像法を用いて、プロテアーゼ活性レベルの低下(関節炎の炎症の早期指標)を明らかにした。SAVを関節炎誘導後に投与した場合(治療モデル)も、関節腫脹とプロテアーゼ活性の低下が認められた。血清導入系よりも重篤で破壊性の高い関節炎を示すトランスジェニックK/BxNモデルにおいても、SAVによって関節腫脹は大きく低減した。
SAVは、K/BxN血清で誘導した内皮透過性の増加の程度を中等度に低下させ、そして一連の標識実験により、このプロドラッグは、好中球の内皮細胞への付着および腫瘍壊死因子による内皮細胞活性化の程度を低下させることが示された。SAVはまた、活性酸素種の産生や脱顆粒といった好中球機能も抑制した。
この研究者チームは、SAVとその他抗炎症アプローチとの潜在的相乗効果、およびSAV自体の薬物動態の改善について臨床的観点から評価することを望んでいる。
doi:10.1038/nrrheum.2009.188
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