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大腿骨頸部骨折後は長年にわたり死亡リスクが持続する

Nature Reviews Rheumatology

2010年9月30日

Bone Risk of death persists for years after hip fracture

年齢50歳以上の患者は大腿骨頸部骨折後の死亡リスクが高くなるが、これは健康状態や骨折後の合併症などの因子に左右される。メタ解析から得られた結果により、体系的アプローチ法による骨折管理の改善の必要性が強調され、これにより死亡率も低下すると考えられる。

大腿骨頸部骨折は一般に、骨粗鬆症の最悪の転帰と考えられている。1990年に、世界で166万件の大腿骨頸部骨折が報告されたが、この数値は2050年までに630 万人に達することが見込まれている。低外傷性大腿骨頸部骨折は主に高齢患者に発生し、発生年齢の平均値は80歳である。個人および社会の両者にかかる大腿骨 頸部骨折の負担は大きく、そのコストは一年目だけで2万1,000米ドルにのぼると推定されている2。これには、骨折治療の直接的費用と機能障害および死亡率上昇に よる社会的コストが含まれる。大腿骨頸部骨折は高死亡リスクに関連しており(特に骨折直後の数年)、これは患者の骨折前の健康状態と、感染症、心血管イベント、 血栓塞栓症などの骨折後の予後に左右される。

Haentjensらは、大腿骨頸部骨折に関連する過大な死亡を明らかにするためにメタ解析を実施し、大腿骨頸部骨折患者のデータを性別と期間で層別化した。全 体で、大腿骨頸部骨折時の年齢が50歳以上の女性22コホートおよび男性17コホート(死亡データあり)を対象とした。これは、米国または欧州において実施された 登録研究や症例研究の患者計50万例以上を含む。本研究では短期(2年未満)と長期(10年以下)の解析を両方実施した。予測された通り、大腿骨頸部骨折後の 初期死亡率は高かった。女性では、骨折直後3ヵ月間の死亡リスクが全死因死亡リスクの5倍となり、男性では、同期間の死亡リスクは8倍となることが示された。骨折 後の解析を行った各期間(骨折後1年、2年、5年、10年)において、過大な死亡率は持続した。骨折後2年以上では、全死因死亡に対する相対的増加は、男性と女性で それぞれ、対照集団と比べて約2.5倍および2倍であった。この比は最長10年間持続した。

死亡の絶対リスクについて、Haentjensらは、米国の大腿骨頸部骨折患者から得られた生存データに基づきモデルを作成し、大腿骨頸部骨折を有する80歳の患者 について死亡リスクの推定値を示した。その結果から、上記の基準を満たす女性では、骨折後1年、2年、5年、10年における年死亡の絶対リスクはそれぞれ8%、11%、 18%、22%であり、男性では18%、22%、26%、20%であることが示唆された。

本研究では、大腿骨頸部骨折後の過大な死亡率が追跡調査の2~10年目に一定の割合で持続し、これは男女で同等であることが示されている。短期(骨折後12ヵ月 以内)では、このような高度に増加した死亡率は徐々に減少するが、一年目を通して男性の方が女性より高値を維持する。この後者の結果はよく知られた現象であり、 大腿骨頸部骨折を経験した男性患者は、女性患者と比べて骨折前よりも脆弱になり、術後や骨折後の管理期間におけるリスク増加につながっている。大腿骨頸部骨 折患者におけるこうした脆弱性および死亡に関連する合併症としては、心血管疾患、感染症、血栓塞栓症、骨折の再発などがあげられる。

Haentjensらによるメタ解析は見事に実施された体系的研究であるが、著者らも認めるようにいくつかの限界もある。本解析に組み入れられた研究は、異なる期 間に実施されていたため、報告された短期死亡率の結果は、本研究の実施時点における全般的骨折管理法に影響を受けていた可能性がある。だが、示されたデー タは観察期間の範囲に関係なく明らかに一致している。また本研究では、大腿骨頸部骨折患者から得たデータを解析するにあたって性別によりリスクを層別化する重 要性が強調されている。しかし、骨折時年齢によりデータを層別化することも有益である可能性もある。死亡率は明らかに、骨折が発生した時点の患者年齢に影響を 受けるからである。さらに、大腿骨頸部骨折発生時の平均年齢は上昇しつつあり、極めて高齢の患者(90歳超)が大腿骨頸部骨折患者のサブグループとして占める 割合は大きくなりつつある。

Haentjensらの研究は、大腿骨頸部骨折患者に関する知識に大きく寄与するものであり、その結果は臨床的に有用である可能性がある。実際、本メタ解析の結果 は、既発表ガイドラインの推奨事項やこの脆弱な患者集団における管理の改善を勧めていくイニシアチブを補強するものである。大腿骨頸部骨折患者の長期死 亡率を鑑みると、合併症など骨折時点の因子を検討することと、長期転帰を改善することが重要性を帯びてくる。合併症と死亡を増加させる骨折再発リスクの増加 も主な検討事項であるが、標準化された二次予防プログラムによりこのリスクは低減できるものと考えられる。本研究では、過大なリスクを包括的に検討することによ り、大腿骨頸部骨折患者の治療を術前および術後共に改善することで、死亡リスクを低下させることの必要性を強調している。

doi:10.1038/nrrheum.2010.152

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