Research Highlights

炎症性関節炎におけるIL-17とTNFの二重阻害治療の将来性

Nature Reviews Rheumatology

2011年6月3日

Experimental arthritis Therapeutic promise of dual blockade of IL-17 and TNF in inflammatory arthritis

関節リウマチ(RA)の発症と進行における腫瘍壊死因子(TNF)の役割、およびこの好炎症性サイトカイン阻害の治療効果については十分確立されている。しかし、必ずしもすべてのRA患者がTNF阻害薬療法に反応するわけではないことから、他のサイトカインによる炎症、軟骨損傷、関節破壊への関与も示されている。Arthritis & Rheumatism 誌に発表されたオランダの研究では、関節炎動物モデルを用いて、こうした過程におけるIL-17 の重要な役割やIL-17とTNF の両者の阻害治療における価値が強調されている。

IL-17は炎症性関節炎の発症に重要な役割を担うことがいくつかのエビデンスから示唆される。このサイトカインはRA患者およびコラーゲン誘発関節炎(CIA)マウスの滑膜 で発現され、マウスでは同サイトカインの阻害または遺伝子発現量の減少により疾患の発症が減少し、重症度が軽減する。過去に実施されたRA滑膜共培養系によるex vivo 研究では、IL-1、IL-17、TNFを組み合わせた阻害はTNFのみの阻害よりも有効であることが示されたが、in vivoでのIL-17とTNFの二重阻害の結果は不明である。この最新研究の筆頭研究者であるWim van den Bergは、「TNF阻害薬は確かにすべてのRA患者に十分とはいえないため、もっと広範囲に適用する必要がある。抗TNF抗体と抗IL-1抗体の併用は感染の問題でうまくいかなかったが、IL-1とは無関係に作用する抗TNF抗体と抗IL-17抗体の併用はより安全なアプローチとして期待できる。」と説明している。

著者らはまず、正常マウスの関節において、過剰発現したIL-17またはTNF、または両者の影響を調べた。「関節における一定量のTNFとIL-17産生を維持するため、この2 つのサイトカインを発現するアデノウイルスベクターの使用を決めた。このアプローチは、反復注射やクリアランス動態の差という欠点を避けるものである。」とvan den Bergは述べている。4日後または10日後に組織学的分析を実施したところ、両サイトカインの過剰発現では、一方のサイトカインのみの過剰発現よりも関節炎症、軟骨プロテオグリカン減少および骨びらんが有意に多かった。重要なことに、両サイトカインが過剰発現した後には不可逆的な軟骨損傷(軟骨の死滅と表面のびらんの検出)が認められたが、一方のサイトカインのみの過剰発現後には認められなかった。追加実験で、この不可逆的な軟骨損傷は単に炎症レベルの増加によって起こるものではなく、関節内のこれらのサイトカインの相乗作用によることが確認された。van den Berg は、「TNFとIL-17の相乗作用は炎症という点で新しいものではないが、本論文に記述した軟骨びらんへの相乗作用は全く新しい知見である。」と述べている。

IL-17とTNF が過剰発現されるとき、いかなる経路のスイッチが入るのだろうか。この疑問を解明するため、著者らは次に、滑膜生検と単離軟骨層の遺伝子発現プロファイ ルの解析を行った。IL-17とTNFの両方が過剰発現されると、一方のみが過剰発現される場合よりも、alarmin S100A8とサイトカインIL-1βの滑膜中mRNA 量、各種マトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)の軟骨中mRNA量がかなり増加した。TNFとIL-17の両方の過剰発現により、NFκB活性化もいずれかのサイトカイン単独の過剰発現よりも有意に亢進した。「相乗効果は主にS100A8やMMPのような下流のびらんメディエーターで認められる。alarmin S100A8の役割はびらんマーカーだけでなく直接のびらんメディエーターでもあるのだから、非常に興味深い。」とvan den Bergは説明する。

最後に、著者らはCIAモデルを用いて、in vivoでのTNFとIL-17の二重阻害の効果を、一方のサイトカインのみの阻害の効果と比較検討した。発症前に抗TNF抗体および可溶性 IL-17受容体を投与したマウスは対照薬または1種類のみのサイトカイン阻害薬を投与したマウスよりも軽症を示した。さらに、関節炎が確立したマウスでは、これら2つのサイトカインの阻害は、対照薬または1種類のみのサイトカイン阻害薬を投与したマウスで認められた疾患の進行をある程度抑制した。TNFとIL-17の二重阻害により、レシピエントマウスでは炎症が軽減し、軟骨破壊も減少した。「この改善効果ともう1つの軟骨びらん抑制効果は、RA患者に対するこのようなアプローチに基づく併用療法を示唆している。一部の企業は、この目的に沿って、TNF-IL-17の二重除去能をもったハイブリッド分子の製造を精力的に進めている。」とvan den Bergは結論づけた。

doi:10.1038/nrrheum.2011.69

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