Research Highlights

全身性硬化症における血管疾患、血小板活性化および組織線維化の分子的関連

Nature Reviews Rheumatology

2011年5月24日

Connective tissue diseases A molecular link between vascular disease, platelet activation and tissue fibrosis in SSc

Jörg H. W. Distlerは、The Journal of Experimental Medicine 誌で発表した自らの研究グループの論文に基づいて、「5-HT2B受容体の阻害が、全身性硬化症(SSc)に対する有望な新しい治療法となるかもしれない。」と述べている。

血管損傷および血小板活性化は、SSc患者の組織リモデリングおよび線維化に先行して生じることが知られているが、これらのプロセスが分子レベルでどのように結びつい ているのかは明らかにされていない。この研究の著者らは、セロトニン(5-hydroxytryptamine[5-HT])に焦点をあてた。セロトニンは活性化血小板から放出され、健常人と比べてSSc患者の血中5-HT濃度は高い。

彼らは最初に、SSc患者由来皮膚線維芽細胞を5-HTで刺激し、健常対照者と比較すると、これらの細胞から産生された細胞外マトリックス蛋白質が用量依存的に増加することを 明らかにした。5-HTは、皮膚線維芽細胞で発現されている3種類の5-HT受容体のうち、5-HT2B受容体を選択的に活性化してこの作用を仲介していることが明らかになった。SSc患者の線維化した皮膚では、健常対照者の健康な皮膚よりも高レベルで5-HT2Bが発現されていることが明らかにされている。

次に、ブレオマイシン誘導性皮膚線維症のマウスモデルで、5-HT2B受容体シグナル伝達阻害の影響を検討した。ブレオマイシンのみを投与した対照マウスと比較して、加えて5-HT受容体阻害薬または選択的5-HT2B受容体阻害薬を投与したマウスでは、皮膚肥厚化が阻害された。さらに、5-Htr2b-/-マウスは、血小板の5-HTの発現が選択的に欠損しているマウスと同様に、ブレオマイシン誘導性皮膚線維症を発症しなかった。最後に、血小板活性化を阻害したと ころ、5-HTレベルが低下し、Distlerは、「血小板の阻害は、早期および後期のSScに類似した様々なマウスモデルの線維症が予防できた。」と述べている。

著者らは、SScを含めた線維性疾患の将来の治療において、これらの知見が臨床現場に直接的な意義を持つと考えている。実際、Distlerは「SScにおける5-HT2B阻害の抗線 維化作用を評価する初めての実証試験が行われているところである。」と語っている。

doi:10.1038/nrrheum.2011.72

「レビューハイライト」記事一覧へ戻る

プライバシーマーク制度