Research Highlights
関節リンパ機能の標的化
Nature Reviews Rheumatology
2011年5月31日
Experimental arthritis Targeting joint lymphatic function
急性炎症の寛解にはリンパ系による余剰体液の排出が重要であるが、慢性炎症の寛解にとってリンパ機能はどのような重要性をもつのか。この疑問に対して、Zhouらの研究結果が部分的解答を出した。慢性炎症性関節炎の場合、リンパ管新生とリンパ排液の亢進が疾患を軽減させる治療として期待される。
著者らは以前に、慢性炎症性関節炎マウスモデル(TNFトランスジェニックマウス)において、リンパ増殖因子VEGF-Cの受容体である血管内皮増殖因子受容体3 (VEGFR-3)の発現を抑制すると、リンパ管新生が阻害され、疾患が重症化することを示した。今回は、同じマウスモデルで逆のアプローチをとり、VEGF-Cを過剰発現させた。
ヒトVEGF-Cの長期発現が可能なリコンビナントアデノ随伴ウイルス(AAVs)、または対照ウイルスを1.5ヵ月齢のTNFトランスジェニックマウスの関節内に注入した。その後 4ヵ月間、未処置マウスが関節炎を通常発症すると思われる期間として調べた。滑膜量、関節の変形、軟骨・骨破壊、破骨細胞数はいずれも、対照処置マウスに比べてAAVVEGF- C処置マウスで減少した。さらに、炎症関節から流入領域リンパ節へのリンパ流速およびリンパ管新生の程度は対照群マウスよりもAAV-VEGF-C群マウスで増加した。
著者らは、関節のリンパ機能を標的とした治療アプローチは慢性炎症性関節炎にとって有望であると結論づけた。
doi:10.1038/nrrheum.2011.74
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