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関節リウマチ:関節リウマチにおける関節損傷および身体障害の理解

Nature Reviews Rheumatology

2011年5月2日

Rheumatoid arthritis Understanding joint damage and physical disability in RA

関節リウマチでは総じて、関節損傷が身体障害と相関するが、関節損傷が軟骨および骨に及ぼす影響は同等ではない。新たなデータにより、軟骨損傷の方が障害に及ぼす影響が大きいと示されたが、この結果の実用的な意味に関する疑問の解明に加え、可能性のある交絡因子を除外するためのさらなる研究が必要である。

ここ数年で、関節リウマチ(RA)における疾患活動性、関節損傷、身体障害が相互に関連することが知られるようになった。早期RA患者では、疾患活動性が身体障害に及ぼす影響の方が関節損傷の影響より大きく、疾患活動性が原因となる機能障害は可逆的である。これに対して、確立したRA患者では関節損傷が中心で、身体障害に不可逆的な影響を及ぼす。RAにおける身体障害の程度は、関節損傷と疾患活動性に加えて、年齢、性別、併存疾患にも影響を受け、Health Assessment Questionnaireの身体障害指標(HAQ-DI)を用いて評価されることが多い。関節損傷は、改変Sharp-van der Heijdeスコアを用いて評価されることが多い。この後者の方法では、関節損傷の2つの要素である、軟骨破壊および骨損傷を併せて評価する。これらは、X線所見による関節裂隙狭小化(JSN)およびびらんのスコアを用いて、まず別々に評価される。蓄積されたエビデンスから、異なる疾患機序がJSNおよびびらんのスコアに影響することが示されているが、両スコアにより評価される関節損傷の2つの側面を、身体障害に及ぼす影響についてど う比較するかの情報は少ない。Aletahaらは、Annals of the Rheumatic Diseases 誌に発表した論文で、数件のRA試験によるデータを解析し、検討を行った。

Aletahaらは、RAの治療法に関する複数の無作為化対照臨床試験の統合データベースを用いて、単変量モデル、層別化モデル、補正多変量モデルによる3種類の解析を行った。この解析の対象とされた試験の中には、総Sharpスコアを用いたものもあれば、改変Sharp-vander Heijdeスコアを用いたものもあったため、スコア法による差異を最小化するために、びらんおよびJSNのスコアを三分位に再スケール化した。

単変量解析では、びらんスコアとJSNスコアのいずれもHAQ-DIスコアとの間に正の相関が認められた。著者らは次に、層別化モデルを用いた。層別化では、JSNスコアの三分位の影響を、対応するびらんスコアの三分位について、またその逆について検討して、骨および軟骨の損傷が身体障害に及ぼす独立した影響を評価した。この解析により、交絡因子の補正後に、JSNスコアはHAQ-DIスコアの増加と正の相関を示すが、びらんスコアには身体障害との明確な関係が認められないことが示された。この結果、Aletahaらは、RAでは軟骨損傷の方が骨びらんよりも身体障害に対する影響が大きいと結論した。

この結果は極めて驚くべきニュースである。実際、このような包括的な方法により身体障害とびらんおよびJSNの関連が別々に検討されたのは初めてであった。

著者らは、この研究のいくつかの限界について論じている。例えば、軟骨損傷と骨損傷をSharp法および改変Sharp-van der Heijde法により評価するという間接的手法が用いられていたこと、およびこの研究が横断的デザインを用いていることである。しかし、このほかにもいくつかの問題が考えられる。びらんとJSNの発現は総じて、少なくとも群レベルでは並行して進行する。それにもかかわらず、疾患プロセスの初期の段階であっても、個々の患者でびらんとJSNの発現傾向に解離が認められる場合がある。このような解離は、基礎にある疾患機序が原因となっている可能性に加えて、患者に行われる治療によっても説明される可能性がある。例えばコルチコステロイドは、びらんの発現に対して抑制作用があるがJSNに対する抑制作用はなく、このため交絡因子であると考えられる。

doi:10.1038/nrrheum.2011.49

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