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臨床試験:RA試験におけるグルココルチコイド使用に関する不十分なデータ

Nature Reviews Rheumatology

2011年6月3日

Clinical trials Insufficient data on glucocorticoid use in RA trials

prednisoneなどのグルココルチコイドは、関節リウマチ治療に生物学的製剤と併用されることが多い。生物学的製剤の主要な臨床研究を分析すると、重要な結果をもたらす可能性があるグルココルチコイドのような治療に関する情報開示が不十分であることが示された。

試験デザイン上の限界から、関節リウマチ(RA)における生物学的製剤の安全性と有効性の比較は困難である。確実な結論を得るためには、多くの場合、デザインの異なる複 数の試験データの注意深い解析が必要とされる。しかし、生物学的製剤を対象とした研究が、グルココルチコイドなど併用薬の使用について報告していないとしたらどうなるで あろうか。生物学的製剤による治療効果について、どのようにして結論を得るべきであろうか。Andréら1は、1994年から2010年に発表された生物学的製剤の主な研究に参加 したRA患者のグルココルチコイド(prednisone)の使用についての記載についてJoint Bone Spine 誌で発表した。その結果、prednisoneの併用状況(同薬が使用されたか否か)が記載されていたのは、レビューの対象とした論文66報のうち56報(85%)のみであった。さらに、prednisoneを併用していた患者の割合は、研究により34%から93%にわたり、使用した生物学的製剤によってバラツキがあった(アバタセプト74.4%、ゴリムマブ 67.9%、インフリキシマブ60.6%、certolizumab 57.5%、リツキシマブ57.5%、エタネルセプト54.4%、トシリズマブ52.8%、アダリムマブ50.4%)。このようなバラツキが生じた理由は、薬剤どうしの1対1の比較を行った研究がないため、既存のデータからは説明できない。

prednisoneの1日平均投与量を算出するデータはわずか12%の研究(66報中8報)でしか示されておらず、これらの研究におけるグルココルチコイドの平均使用量は5~9mg/ 日の範囲であった。さらに、prednisoneの最大許容用量を示していたのは、評価対象のわずか59%(39報)のみであった。研究期間中にprednisoneの用量が変わらなかったことを記していたのは66報中42報(64%)のみだった。注目すべき点は、prednisoneの平均用量(mg/日)、最大許容用量、10mg/日を超える用量を投与された患者の割合、の項目すべてに関する情報を記載してあった報告は3%にすぎなかった点である。

新たに生物学的製剤が導入されたにもかかわらず、グルココルチコイドは依然としてRAに対する治療選択肢において重要な薬剤である。Goekoop-Ruitermanら2は、BeSt試 験において、発症間もないRA患者では、DMARD 3剤(シクロスポリン、アザチオプリンまたは金製剤)のいずれか1剤とprednisone(維持用量7.5mg/日)との併用療法は、イ ンフリキシマブとメトトレキサート併用療法と同等の臨床的改善効果が得られることを示した。2010年に発表された、併用を含む様々な抗リウマチ薬のX線学的進行への影響を 分析したメタ解析では、生物学的製剤1剤+メトトレキサートと、DMARD 2剤+導入時グルココルチコイドの直接比較で差が認められなかった。

生物学的製剤にグルココルチコイドを併用した場合、感染を主とする有害事象が発生しやすいことはよく知られている。だが、グルココルチコイドと生物学的製剤の併用療 法に関連する感染リスクの増加について検討した研究はごくわずかである。グルココルチコイドの有害作用に関するドイツ人RA患者1,066例を含む最新のメタ解析(2009年発 表)4 では有害事象の発現頻度は、prednisone 7.5mg/日以下投与患者では、7.5mg/日超投与患者よりも低いことが示された。しかし、真菌症、息切れ、下肢浮腫などの有 害事象の発生頻度は、用量依存的に上昇した。真菌症の発現は、過去12ヵ月にグルココルチコイド投与を受けなかった患者では4.5%であったのに対し、グルココルチコイドの 投与を6ヵ月以上受けた患者では、5mg/日未満を投与された患者で5.8%、5~7.5mg/日を投与された患者で6.6%、7.5mg/日超を投与された患者で8.2%であった。とはいえ、何%の患者が10mg/日を超えるprednisoneを投与されたかを記載している研究はごくわずかであり、1日の平均用量や最大用量のデータをほとんどの研究で示していないことをAndréら1は示した。このような情報が無いため、RAに対する生物学的製剤の研究で、グルココルチコイド投与が有害事象に及ぼした影響を評価することは困難である。

グルココルチコイドが患者の転帰に影響を及ぼすとすれば、グルココルチコイドの併用は、RAに対する生物学的製剤の研究の結果に何らかの影響を及ぼす可能性がある。グ ルココルチコイドの追加投与は、投与対象患者の疾患活動性が高いことを反映している。一方、グルココルチコイド投与は臨床的改善をもたらす可能性がある。この考え方は、 発症早期のRA患者(150例)を対象とした試験で、当初開始したDMARDにprednisone 7.5mg/日を追加した患者では、DMARD療法のみの患者と比較し、2年後の寛解率が ほぼ2倍であった(55% vs 30%)5 という結果から確認されている。RA患者を対象とした別の試験では、生物学的製剤にprednisone 5.0~7.5mg/日を併用した患者(105例)は、併用しなかった患者(105例)に比べて寛解達成率が4倍高かった。これらの結果から、生物学的製剤の有効性や寛解率のバラツキは、他の因子、中でもグルココルチコ イドの併用の有無が原因となっている可能性がある。したがって、これらの研究のデザインと結果を評価する際、グルココルチコイドの情報を考慮することが重要である。

RAにおける疾患再燃に対する意識が高まっている。しかし、グルココルチコイド投与量の変更あるいは漸減の後のRA再燃率に関する無作為化臨床試験のデータは限られて いる。RA患者を対象に、prednisone中止の影響をモニタリングするために、2件の無作為二重盲検プラセボ対照試験が実施されている。両研究において、再燃はグルココ ルチコイド中止後に繰り返し発生しており、RA治療におけるprednisoneの有益性を裏づけている。しかし、疾患再燃の定義は両研究で異なっている。Pincusらは、RAPID3 (routine assessment of patient index data 3)指標(0~30の評価尺度)の数値変化が12週間にわたり3単位未満の場合、安定状態と定義し、3単位以上の変化を再燃としている。これに対して、Tengstrandら8は、疾患活動性の上昇を、28関節の疾患活動性スコア(DAS28)と健康評価質問票(HAQ)スコアにおける悪化と定義している。OMERACT(Outcome Measures in Rheumatology Clinical Trials)のRA再燃定義作業グループ(RA Flare Definition Working Group)は、再燃を「もし持続すれば、多くの場合に治療の開始または変更に至るような疾患活動性の悪化で、治療の開始・変更・強化を必要とするような継続期間と重症度を呈する一群の症状である」と定義した。このように、再燃の定義に食い違いがあるため、再燃の頻度を算出できるような質問票の開発は、prednisone投与が疾患活動性に及ぼす影響をさらに明らかにするうえで有用であろう。

まとめると、Andréら1の研究から、RA患者における生物学的製剤の有効性と安全性に関する報告の大部分は、prednisoneの併用療法について十分な情報を提供していな いことが示された。このようなprednisone使用に関する報告の欠如は、元の研究自体の解釈に影響を及ぼすのみならず、これまでのメタ解析における交絡因子となっている。バイアスの影響を受けない生物学的製剤の有効性と安全性の評価は、今後の研究では登録患者が何らかのグルココルチコイドの併用投与を受けたかどうかに関する情報、またも し投与されていたならば投与内容の詳細な情報(投与期間、用量および用量変更やその他の変更)について報告すべきである。

doi:10.1038/nrrheum.2011.70

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