麻疹
Nature Reviews Disease Primers
2016年7月14日
Measles
麻疹は麻疹ウイルス(MeV)によるヒト感染症である。有効な麻疹ワクチンが導入されるまでは、ほぼ全ての小児に麻疹の罹患経験があった。麻疹の症状は発熱および丘疹性皮疹で、咳嗽、鼻感冒および/または結膜炎を伴う。MeVによって免疫抑制が引き起こされるだけでなく、肺炎、胃腸炎、失明、麻疹封入体脳炎および亜急性硬化性全脳炎のような麻疹の重度の後遺症が残る。症例診断は、臨床症状だけでなく抗MeV IgM抗体および/またはウイルスRNAなどの検査結果によって行われる。現在使用されている全ての麻疹ワクチンにはMeVの弱毒化生株が使用されており、麻疹の発症率低下を目的として、世界のワクチン接種率の増加に向けた取り組みが大きく前進している。しかし、世界各地で流行性感染が続いている。麻疹は今も世界の小児死亡の主な原因であり、毎年10万例以上の死亡が推定されている。先進工業国における麻疹の死亡率は0.01%未満と推定されるが、発展途上国では5%以上とみられている。6つすべてのWHO管轄地域で、高いワクチン接種率と高度な監視システムの実現と持続によるMeVの流行性感染の阻止が目標に掲げられている。有効性が高く比較的安価なワクチンが利用できるようになったことをはじめ、麻疹ウイルスの抗原性変異が少ないこと、および病原体保有動物がいないことにより、麻疹の根絶は目前と考えられる。
PrimeView
麻疹は感染性の高い空中病原体である麻疹ウイルスによって引き起こされる。このPrimeViewでは、麻疹ウイルスの流行に着目し、安価で安全なワクチンが流行を阻止し、世界的に麻疹を排除する方法について解説する。
本Primerの図解サマリー
doi:10.1038/nrdp.2016.49
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