Nature ハイライト
古生物学:最初の蠕虫様動物の最期の歩み
Nature 573, 7774
カンブリア紀は約5億4000万年前に生命の爆発的な進化で始まったことで知られ、現在生きている動物のほぼ全てのボディープランはこの時に進化したと考えられている。直前のエディアカラ紀にも生物は存在したが、それらは奇妙で、現生のどの生物とも関連付けるのは難しい。果たして、エディアカラ紀にも現代的な姿をした動物は存在したのだろうか。分子的研究からは肯定的な結果が得られているが、化石証拠は乏しく、異論は多い。今回S Xiaoたちは、中国で発見された、エディアカラ紀末期(5億5100万〜5億3900万年前)の細長くて分節した体を持つ蠕虫様動物の化石について報告している。この動物の体の幅は5〜26 mmほどで長さは27 cmに達する。この化石標本は、この動物が移動した際にできた堆積物中の這い跡のちょうど先端にこの動物自体が保存されているという、まさに「死の行進」を捉えたものである。こうした這い跡からは、この動物に運動性が備わっていたことが明らかになるとともに(エディアカラ紀の動物ではこれが必ず議論になる)、この動物は、連続的な這い跡を作る能力を持つことが示されたエディアカラ紀の既知で最古かつ唯一の体化石タクソンであると主張された。この動物はおそらく左右相称動物(ステム群環形動物または汎節足動物)の一種と見られ、こうした生物がカンブリア紀以前に進化したという分子時計からの予測が裏付けられた。
2019年9月19日号の Nature ハイライト
神経科学:ニューロンの成熟は一方通行ではない
天体物理学:活動銀河核からの9時間の準周期的なX線の爆発的放射
コンピューティング:スピンによる確率論的コンピューティング
化学:電気を使ってエーテル合成を簡単に
気候変動緩和策:エアロゾル排出量削減に起因する気候ペナルティはない
古生物学:最初の蠕虫様動物の最期の歩み
免疫療法:CAR-T細胞で心筋繊維化を標的化する
免疫学:SLC19A1は環状ジヌクレオチドの輸送体である
腫瘍生物学:E-カドヘリンは転移形成に必要である
エピジェネティクス:ヌクレオソームに結合したMLLヒストンメチルトランスフェラーゼの構造