Nature ハイライト
進化学:はるかに古い海綿動物の化石候補
Nature 596, 7870
今週号では、海綿動物が約8億9000万年前の海洋に生息していた可能性が示されている。これは、これまで考えられていたよりも2億年以上古い年代である。海綿動物は極めて単純な動物で、地球上に最初に出現した多細胞動物であった可能性が高い。現生の海綿動物の遺伝学的証拠から、海綿動物の系統が確立されたのは極めて古い年代であったと示唆されているが、海綿動物の決定的な化石証拠として最古のものは、カンブリア紀(約5億4300万年前に始まる)という、他のより複雑な動物が進化・分岐し始めた時代から得られたものである。化石の分子バイオマーカーからはさらに古い証拠が得られているが、それについては激しい議論がある。E Turnerは、浴用スポンジの拡大写真によく似た見た目をした、珍しい岩石構造を研究してきた。より年代の新しい岩石に見られるそうした構造は、海綿動物の腐敗によって生じたと考えられている。今回、それに似た構造が約8億9000万年前の岩石に見いだされたことで、海綿動物が、サンゴ類が進化するはるか前に初期の礁を構成していて、より複雑な動物の進化を可能にした海の酸素化に大きく寄与した可能性が出てきた。
2021年8月5日号の Nature ハイライト
惑星科学:極域のオーロラによる木星の上層大気の加熱
光物理学:非線形フォトニック系における量子化された輸送
物性物理学:液体金属類似物質における擬ギャップ
有機化学:電気化学的なアジリジン合成方法
進化学:はるかに古い海綿動物の化石候補
神経科学:発達中の神経系の空間パターンを決める
コロナウイルス:SARS-CoV-2の懸念される変異株に対するモノクローナル抗体の有効性
コロナウイルス:SARS-CoV-2 mRNAワクチンはロバストな胚中心B細胞応答を誘導する
微生物学:共生菌類に対するIgA応答
遺伝学:CpGアイランド遺伝子を活性化する
構造生物学:細胞周期におけるセパラーゼ調節の構造基盤