Nature ハイライト
医学:インフルエンザウイルスの内部構造が明らかに
Nature 439, 7075
インフルエンザウイルスの内部の詳細な観察結果が報告された。これは細胞内でウイルスが複製する仕組みを解明するのに役立ちそうだ。 以前からわかっていたことだが、インフルエンザウイルスのゲノムのRNAは8個に分かれてタンパク質とともにまとめられており、リボ核タンパク質複合体、すなわちRNPを形成している。これはヒトの染色体の凝縮に通ずるものがある。しかし、感染細胞中で新しいウイルス粒子ができる際に、これらのRNPがランダムに取り込まれるのか、選択的に取り込まれるのかは、長く議論が分かれていた。 今回河岡義裕たちは、この謎を解明した。インフルエンザウイルスのRNPが中心の1個を7個が取り巻く独特なパターンをとっていることを、電子顕微鏡を使って明らかにしたのである。つまり各RNPはシグナルを発していて、複製の際にウイルスがRNPの完全な一揃いを選んで粒子に取り込めるよう助けていると考えられる。今回の発見で抗ウイルス薬の開発が早まるかもしれないと著者たちは述べている。
2006年1月26日号の Nature ハイライト
医学:インフルエンザウイルスの内部構造が明らかに
数理生態学:ドル紙幣の動きを疫学に活かす
化学:秩序と無秩序の間に位置する金属
宇宙:遠くをまわる小さな惑星
植物:植物と動物は異なる代謝則に従っている