今週号の3つの研究で、細胞はどのように自身のDNAをコピーするのかという長い間解かれなかった秘密が明らかにされた。 細胞がDNAを複製するとき、二重らせん構造をとる2本の鎖がファスナーのように開き、フォーク型になった鎖にタンパク質で構成される装置が付着する。一方のDNA鎖上では、このタンパク質複合体が連続した相補的DNA鎖を合成するが、もう一方のDNA鎖上では、プライマーと呼ばれる短いRNA分子を作成して、付着させなければならない。そしてそこが、もう1つの相補鎖合成の開始点となる。 細胞は、新しく合成される鎖に損傷部位をコピーしないように、壊れたり損傷を受けたりしたDNAをどうやって処理するのか、その方法について科学者たちは頭を悩ませてきた。R HellerとK Mariansは、このタイプの損傷と同じようなものを作ってやることで、DNA合成装置がその損傷部位を迂回し、すき間を残すことを明らかにしている。そのすき間はおそらく損傷が修復された後に埋められるらしい。 A van Oijenたちは、2つのDNA鎖のそれぞれにおける新しいDNA合成を細胞がどのように協調させているかを調べた。彼らは、DNA複製複合体によって1分子のDNAがつくられていくようすを観察し、プライマーを作成するタンパク質が、複合体全体の調和をとるための分子ブレーキとして機能することを示している。またN Zenkinたちは、主に転写にかかわっているRNAポリメラーゼと呼ばれる酵素がRNAプライマーを作成する仕組みを調べた。彼らは、RNAポリメラーゼが、RNAとDNAを含む複合体を形成できることを示し、これと同じような複合体が転写を制御しているのではないかと考えている。