性質がよくわかっている理想的な触媒を用いる研究室での実験における化学反応過程を解明しようとする場合と、化学工業で実際によく使用される、混ざりものが多くてごちゃごちゃした系の解明とでは、取り扱い方がかなり違っている。D De Vosたちは、結晶性固体の触媒活性が結晶面によってどのように異なるのかマッピングを行った。この研究は、こうした違いを小さくするのに役立ちそうだ。 De Vosたちは、結晶表面に付着した個々の分子の反応を観察する方法について報告している。彼らは、いわゆる層状複水酸化物鉱物からなる固体触媒によって分解(加水分解)、もしくはブタノールと結合(エステル交換)できる有機分子(炭素系)が含まれる反応について調べた。問題の有機分子は、どちらの反応によっても光照射により蛍光を発する形になる。これにより、1分子単位で反応を観察できるので、触媒表面上で反応が最も迅速に起こる場所をマッピングできる。この結果、加水分解は特定の結晶面でしか起こらないが、エステル交換は結晶全体のどこでも起こることがわかった。このような研究によって、工業で用いられる条件下での触媒の挙動が推測できるようになりそうだ。