Cover Story:特集:2024年を振り返る:今年の重要人物10人
Nature 636, 8043
2024年も残すところあとわずかとなった。今号では恒例のNature's 10(今年、科学の進歩に貢献した10人)で過去12カ月を振り返る。今年は、世界的に重要な課題において重要な働きをした2人、すなわち致死的なMpoxのアウトブレイク(集団発生)に警鐘を鳴らしたコンゴ民主共和国(DRC)の国立生物医学研究所の疫学者Placide Mbalaと、科学出版における剽窃、盗用、ペーパーミルを暴く活動を行うベルリン自由大学(ドイツ)の研究者Anna Abalkinaが選出されている。その他に、ドナー由来の遺伝子編集T細胞を用いて自己免疫疾患の治療を成功させた海軍医科大学(中国)の医師Huji Xu、原子核時計を開発した物理工学研究所(独)の物理学者Ekkehard Peik、嫦娥6号ミッションによって地球にもたらされた月の土壌試料を解析した中国国家宇宙局の地質学者のLi Chunlai、人工知能(AI)ツールを天気予報に応用して、従来の天気予報よりも迅速かつ正確な予測を可能にする技術を実現したGoogleディープマインド社(英国)の研究者であるRémi Lam、宇宙の膨張速度に関する長年の疑問を解明する可能性のある研究結果を発表したシカゴ大学(米国)の天文学者Wendy Freedmanが選出されている。これに加えて、重大な理念を支持してきた3人である、カナダの研究者の20年ぶりに給与引き上げを実現したキャンペーンを主導したトロント大学(カナダ)の博士課程学生Kaitlin Kharas、気候変動は人権問題であると主張する画期的な訴訟で数千人の女性の弁護に成功したスイスの弁護士Cordelia Bähr、学生主導の革命を受けて、バングラデシュの暫定指導者になるという呼びかけに応えた、ノーベル賞受賞経済学者Muhammad Yunusが選出されている。表紙は、壮大な天体ショーと研究の機会を存分に与えてくれた太陽からインスピレーションを得ている。今年の日食は、太陽活動が活発な時期と重なって、コロナなどの特徴をより容易に識別できたため、多くの人にとってさらに興味深いものとなった。
2024年12月19日号の Nature ハイライト
天文学:初期宇宙における過剰な質量の休眠ブラックホール
惑星科学:月の年齢を若く見せる潮汐加熱による再溶融
原子核物理学:放射性物質を低減させた固体原子核時計向け材料
物性物理学:FePS3におけるテラヘルツ場誘起準安定磁化
ナノスケールデバイス:単結晶二次元材料の成長によるモノリシック集積化
エネルギー材料:カルノーバッテリーに適した温度で相変化する共融/共晶材料
光学材料:柔軟性多結晶ダイヤモンド極薄膜のスケーラブルな作製
海洋科学:南極海氷の減少による海洋の熱放出の増大と嵐の強化
気候科学:大気の川が引き起こす極端な温度上昇
遺伝学:オオムギゲノムの多様性が明らかに
がんゲノミクス:正常な乳房組織でもがんに類似した変化が見られる
神経科学:複雑な行動も単純な要素の積み重ね
微生物生態学:土壌生態系の極端な現象への応答は予測できる
微生物学:マウス腸内菌類相の優勢種の発見とその役割
ウイルス学:HPAI H5N1ヒト分離株の哺乳類における極めて高い病原性
ヒト神経科学:脳規模関連研究の設計次第で再現性が向上
健康科学:フルクトース摂取量が増えると、回り回って腫瘍が増殖する
分子生物学:エンハンサーと転写因子の遺伝子発現との関連を詳細に解析
分子生物学:ncPRC1RYBPは残った修飾を読み取って、新たな修飾を書き加える
生物物理学:天然変性タンパク質はキラリティーに対して寛容である