我々が他人の顔を見てどう受取るかは、ふだん自分の周囲にいる人たちがどんな顔をしているかに影響されるのだという。特定の性別や民族や感情の顔を目にすることで、それらと違う性別や民族、感情を表す顔の特徴を察知するのが強化されるようだ。M A Websterたちは、3群の顔の画像をコンピューターで作成して被験者に見せた。各画像群は、男性と女性、日本人と白人、嫌悪感を示す顔と驚いた顔のそれぞれ2種類の顔を、混合率が1%きざみに0〜100%となるよう合成した。それぞれの顔画像群について、被験者に2種類の顔の完全な中間型にあたると思う顔を選ぶよう指示した。ところが被験者に最初に2種類の顔の一方を見せていた場合、被験者が中間型だと思う顔は見せた顔の側にずれ込んだ。たとえば、最初に男性の顔を見せると、顔画像群のうち「女性」だと感じる顔の割合が多くなった。つまり中間型だと思う顔が男性の顔の側にシフトしたのである。この効果は即座に起こり、なおかつ長い時間スケールにわたっても起こることを著者たちは見つけた。米国で長く暮らす日本人学生は、米国生活が短くて白人の顔になじんでいない日本人学生に比べて、日本人−白人の合成画像群で「日本人」だと感じる顔の割合が多くなった。