工学技術的見地からすれば、最も賢い膜は細胞膜ということになるだろう。細胞膜には、細胞外環境に存在するさまざまな成分と特異的に相互作用するように作られた多数の分子が存在する。自然界には存在しない分子だが、他の合成化学物質と特異的に反応するものを細胞表面に付け足す方法は目下開発中である。これが可能になれば、細胞の動きを極めて正確に追跡して画像化することが可能となり、治療目的で広範囲な応用が考えられる。C R Bertozziたちは、この手法を大幅に進展させ、このような非常に特異性の高い反応の1つで、培養細胞で既に開発されているものを、生きた動物(実験用マウス)で起こす仕組みを明らかにした。この手法は、「生きた動物の生物学的性質を探るのに使える未来の化学反応プローブとして最初のもの」となるかもしれないとBertozziたちは考えている。