世界で最も小さいことがほぼ間違いないギター弦が、カーボンナノチューブの電気機械的な特性を研究する一環としてP L McEuenたちによって作成された。今週号では、両端を固定したカーボンナノチューブでギター弦のような振動を電気的に起こし検出した結果が報告されている。たった1.5ミクロン長の弦で雷鳴のような低音域の振動数が観測される可能性は低いが、この研究によって、カーボンナノチューブを使えば、ナノ電気機械システム(あるいは、NEMS)の作成が可能なことが明らかになった。中でも、NEMS振動子は極めて感度の高い質量検出、高周波信号処理その他への応用が考えられている。ナノチューブの形をしたカーボンは、おそらくこのような応用に最適な究極の材料であろう。カーボンナノチューブは知られている材料の中で最も硬く、振動子として使えるようなその他の性質も備えている。重要なのは、ナノチューブがトランジスタとして機能でき、したがって、自分自身の運動を検出できる可能性があることだ。このような大きな期待にもかかわらず、室温で作動し自己検出するナノチューブ振動子は今まで出現していなかった。McEuenたちが報告しているナノチューブの調整可能で弦のような振動の生成と検出は、極めて小さい力を感度よく検出し変換するデバイスを作成する手法への道を開きそうだ。これはさまざまな科学・技術分野への応用が期待できる。