Nature ハイライト

進化:人類に「幼児期」が誕生する前の幼児

Nature 431, 7006

現生人類は比較的未成熟の状態で生まれ、幼児期から青年期を終えるまでの期間も長い点で、他の霊長類のどれとも異なっている。この期間は学習と成長の時期であり、我々ヒトがヒトたるために不可欠な特徴の1つだとする見方もある。では、こうした形質はいったい進化のどの時期に現れたのだろうか。 J-J Hublinたちの報告によると、我々現生人類の絶滅した親戚にあたるホモ・エレクトゥスは、道具を製作することはできたが、生活史は霊長類に近かったのだという。そのため、現生人類に特徴的な成長戦略に移行したのは、ホモ・エレクトゥスが現れたおよそ200万年前よりもあとだったに違いない。Hublinたちは180万年前の「モジョケルトの子供」と呼ばれる化石を調べた。この化石標本はジャワで見つかったもので、これまで掘り出されたなかで唯一の保存状態のよいホモ・エレクトゥス幼児の頭骨である。CTを使った詳細な解析や現生人類とチンパンジーの多数の標本との比較によれば、この幼児個体は1歳ほどで死亡し、脳容積はホモ・エレクトゥスの成人平均のおよそ4分の3もあった。この脳の相対的成長パターンは現生類人猿のパターンに似ていて、現生人類のものとは異なっている。現生人類で幼児の脳が成人並みになるにはもっとずっと時間がかかる。 この発見は、ホモ・エレクトゥスと現生人類の成長状況に関するこれまでの一連の研究成果(たとえばNature 414, 628-631; 2001を参照のこと)を裏づけるものであり、ホモ・エレクトゥスと解剖学的な意味での現生人類との間には認知能力の発達に大きな差があったことを意味する。

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