Nature ハイライト

環境:泥炭から放出される炭素

Nature 460, 7255

数百年から数千年前に形成された泥炭堆積物の呼吸活性化を介するCO2放出の気候温暖化による加速は、地球の気候に対する強い正のフィードバックとなる可能性がある。しかし、泥炭地帯、特にその深部に存在する炭素の長期的な温度感受性は、まだはっきりわかっていない。今回、亜北極域の泥炭地帯で行われた長期(8年以上)の人工温暖化実験により、約1 °Cの温暖化が生態系の呼吸を50%以上加速し、その加速の大部分が、永久凍土上の活性層の底部付近に存在する、取り扱いが困難な古い炭素に由来していることが明らかになった。この知見は、気候温暖化が、従来の想定を大きく超える規模で泥炭地帯の地中に蓄積された炭素の呼吸を加速しており、京都議定書でEU全体が目標とする温室効果ガス排出量削減分のほとんどが、これにより相殺される可能性があることを示唆している。

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