Nature ハイライト
物理:ナノスケール・コンピューター・トモグラフィー
Nature 467, 7314
既に確立されているX線トモグラフィー技術では、生物体全体や単一の細胞の三次元内部構造に加えて定量的な情報も明らかにでき、これらは通常、X線減衰データから計算される。新たに誕生したX線コンピューター・トモグラフィー技術は、「タイコグラフィー(位置の少しずつ異なる多数の回折パターンから画像化する手法)」X線画像化法に基づくもので、吸収の弱い対象からであっても詳細な位相コントラスト情報の抽出が可能である。このトモグラフィー技術により、定量的X線画像化がナノレベルの世界に持ち込まれるようになった。この新規な方法では1 %未満の密度変化まで感度があり、今回、骨試料の三次元画像でその能力が実証された。得られた画像では、骨細胞小腔や相互連結した細管網などの、100 nmの長さスケールの構造がはっきり解像されている。このタイプの高分解能定量トモグラフィーは、生物医学や化石の微量分析の分野ばかりでなく、材料科学でも使える可能性がある。
2010年9月23日号の Nature ハイライト
細胞:低分子RNAが移動する仕組み
医学:競争力のある腸病原体
細胞:幹細胞の状態を制御するメディエーターとコヒーシン
物理:ナノスケール・コンピューター・トモグラフィー
化学:視覚の高速光化学
気候:1970年代に起こった海水温の予想外の低下
地球:弱い断層と地震の不安定性
生態:個体群が終末に近づくとき