Nature ハイライト

物理:分子をレーザー冷却する

Nature 467, 7317

ドップラーレーザー冷却法の開発によって、これまで不可能であった1ミリケルビン未満という極低温が得られるようになった。このような低温では、粒子の動きは事実上止まってしまうため、物理現象を極めて詳細に研究し、制御することが可能になる。原子のレーザー冷却は約30年前に実証されたが、この技術はまだ分子に拡張されていなかった。極低温原子は多分、極低温分子よりもおもしろいだろうと考えられる。それは、極低温分子の内部の複雑さを使って、量子情報処理から化学反応、さらに素粒子物理学までさまざまな物理現象を調べ、操作できる可能性があるからだ。現在、極低温分子を作る唯一の手法は、極低温アルカリ原子の結合によるアルカリ2原子分子の生成である。エール大学の研究チームは今回、極性をもつ一フッ化ストロンチウム(SrF)という2原子分子のレーザー冷却を実験的に実証したことを報告している。この手法をさらに改良することによって、アルカリ2原子分子とは化学的に異なる種の分子を、極低温で大規模に生成させることが可能になるかもしれない。

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