Nature ハイライト
Cover Story:死に至る誘惑:蚊の呼気探索行動をかく乱する匂い物質はマラリアやデング熱対策用の候補物質になる
Nature 474, 7349
血液を吸う雌の蚊は、宿主脊椎動物が吐いた息に含まれるCO2に誘引されて、吸血相手を探す。そのため、昆虫が媒介する疾患の伝播を防止する方法を探すうえで、CO2感知機構は標的として関心を集めている。A Rayたちの研究グループは、最も致死性の高い疾患を媒介する3種類の蚊(ハマダラカ属、ヤブカ属およびイエカ属)のCO2感知経路を変化させる揮発性の匂い物質群を同定し、これがCO2を介する誘引行動を阻害できることを実証している。これらの化合物の1つは、CO2を感知する神経細胞の活性化を非常に長時間持続させる新規な性質を持っており、短時間の曝露でも持続的な方向感覚障害を生じさせる。このほかに、CO2感知を模倣する、あるいは感知を阻害する物質も見つかっている。この原理実証実験で用いられた2,3-ブタンジオンなどの化合物は、その性質からヒトでは使用できないが、少量で効果を示す新世代の忌避剤および誘引剤の開発につながる可能性がある(Letter p.87, N&V p.40)。
2011年6月2日号の Nature ハイライト
構造生物学:病原性大腸菌の線毛構造
工学:グラフェン系フォトニックチップ
地球:白紙に戻ったスノーボールアースの出口
地球:氷の下のフィヨルド
考古:アウストラロピテクス類の移動を示す歯の記録
生態:地底に棲む線虫類
古生態:オポッサムの社会史
進化:潜在的変異で事態に備える
神経:初期の神経発達