Nature ハイライト

脳:「痛い目」にあうかどうかを予測する

Nature 429, 6992

あなたは今、とりとめのないことを思いながらいつものように道を歩いている。そのとき、強面の2人組の男が近づいてくる。ピンストライプのスーツにソフト帽、ツートンカラーの靴といういでたちで、バイオリンケースを携えている。即その場を逃げ出すかどうかは、この恐ろしげな2人組に何かされるかもしれないと妥当な推測を下すかどうかにかかっている。しかし、あなたがその場に止まっていれば、2人が久しぶりに会うシカゴに住むいとこたちで、バイオリンケースの中にはプレゼントと花束が入っていたということになったかもしれない。 つまり、生きるか死ぬかは、差し迫る危機を正しく予測できるかどうかで決まるのである。さらにこうした予測はできるだけ早く行うべきだ。しかし、早すぎても、誤った結果につながる。したがって、苦痛を伴う結果を予測することは、単純な古典的条件づけよりもはるかに柔軟で微妙な過程なのである。神経科学者たちは、新規の刺激に対してどう脳が働くかをシミュレートする高度なコンピューターモデルをつくりあげてきた。問題は、こうしたモデルが理論の域を出ないことである。脳が実際にどのように苦痛やその予測に関する情報を処理しているのかについては、さらにわからない部分が多い。 B Seymourたちは、被験者に予測のコンピューターモデルに基づいたテストに取り組んでもらった。そしてテスト中の被験者の脳を機能的磁気共鳴映像法(fMRI)で調べた。すると実際、脳はまさに期待通りのやり方で情報を処理していることがわかった。Seymourたちは、腹側線条体と呼ばれる脳領域が、忌避学習に重要であることを突きとめ、不確実で刻々と変化してゆく現実世界において、脳がいかに不快な状況の予測に適しているかを示している。

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