Nature ハイライト 進化:女王アリに雄が「クローンの逆襲」 2005年6月30日 Nature 435, 7046 雌雄間の利害の対立に、いわば「究極の」方法で対処しているアリが見つかった。雄と雌がまったく別の遺伝子プールを発達させたのだ。この型破りな仕組みができあがったのは、女王アリと雄アリがクローンとして生まれ、両方の遺伝子群が互いに隔離されたままになっているからである。 このアリはコカミアリ(Wasmannia auropunctata)といい、通常の有性生殖では生殖能力のない働きアリしか生まれない。繁殖を担うのは女王アリと雄アリだが、彼らはそれぞれ自分自身と同一の遺伝子群をもつ子を作り出す。これはつまり、雄と雌の遺伝子プールがそれぞれ独立に進化していくことを意味する。D Fournierたちはこの研究にあたって、仏領ギアナのコカミアリの巣34個からDNAを採集して調べた。彼らによると、これは雄のクローン生殖として動物界で初めての報告例だという。 こんな状況が生まれたのはおそらく、女王アリがクローン生殖することによって自分の遺伝子を守り、有性生殖は働きアリを産むためだけに使おうとしたためだろう。そうなると、雄アリは生殖能力のない働きアリにしか自分の遺伝子を伝えられないことになる。そこで雄アリは自分もクローン生殖をすることで反撃した。つまり雄アリの遺伝子系統は独自の変動をしていくことになるのである。「実際には、このアリの女王と雄は別種として分類すべきなのかもしれない」とD QuellerがNews and Viewsで解説している。 2005年6月30日号の Nature ハイライト 気候:エアロゾル削減が招く将来の気候温暖化 進化:女王アリに雄が「クローンの逆襲」 物理:血管を巡る磁石 医学:ヒト癌の動態が明らかに 地球:山脈の形成は低温ですばやく行われる : 目次へ戻る