Nature ハイライト 医学:ヒト癌の動態が明らかに 2005年6月30日 Nature 435, 7046 血液細胞の形成のようすを基盤にして、ある種の癌細胞が分子標的治療に対してどのように反応するかを記述する数学的モデルが開発された。 慢性骨髄性白血病は、遺伝的変異によって異常なタンパク質がつくられ、このタンパク質がある種の白血球を継続的につくるように体に命令することが原因で起こる。イマチニブは、このタンパク質の活性を抑える特異的阻害剤で、多くの患者ではこの薬によって癌細胞が激減する。しかしイマチニブは病気を完全に直すことはできず、その作用機序のもっと詳しい解明が求められている。 これを受けてF Michorたちは数学的な方法を用い、イマチニブによって白血病細胞を減少させることはできるが、in vivoでの白血病性幹細胞の根絶はできないらしいことを明らかにした。この研究で、イマチニブの標的となる変異は白血球幹細胞に起こるらしいことも明らかになった。この知見は、今後の薬剤開発や薬剤耐性の回避戦略などにかかわるものだ。 2005年6月30日号の Nature ハイライト 気候:エアロゾル削減が招く将来の気候温暖化 進化:女王アリに雄が「クローンの逆襲」 物理:血管を巡る磁石 医学:ヒト癌の動態が明らかに 地球:山脈の形成は低温ですばやく行われる : 目次へ戻る