Nature ハイライト

生態:チンパンジーに友への思いやりはない?

Nature 437, 7063

他者を助けるのは、どうやらヒト独自の習性であるらしい。今週号に報告されたチンパンジーの行動研究から、たとえ自分が不利益をまったく被らない場合でも、チンパンジーは隣人に善行を施そうという気を起こさないことがわかったのだ。  J Silkたちは、飼育されている血縁関係のないチンパンジーたちに、2つの選択肢から1つを選べる装置を与えた。チンパンジーは自分だけ餌をもらうという選択肢か、自分に餌がもらえるうえ、別のチンパンジーにも同じ餌が与えられるという第2の選択肢を選ぶことができる。報告によると、たとえ自分が何も代償を払わずに仲間を手助けできるとわかっていても、チンパンジーは第2の選択肢を選ぼうとはしなかったという。  この実験結果からSilkたちは、チンパンジーでは「他者を思いやる選択」は行動の動機にならないのだと結論づけている。それに対して、献血や慈善行為、社会的犯罪者への処罰といったヒトのさまざまな慣習は、他者への思いやりの現れである。今回の実験で使われたチンパンジーたちは安定した社会集団で何年間も一緒に暮らしてきており、そんなチンパンジーたちでも仲間への思いやりが見られないことはさらに意外だと言える。

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