北太平洋の冷たい海に生息するネズミザメは、哺乳類などの温血動物によく似た、比較的高い温度でのみ機能する筋肉を持っていることがわかった。大半の魚類が周囲の水温に順応するのとは異なり、このサメは、筋肉内での熱発生によって泳ぎ続けることができる。 R Shadwickの研究チームは、3尾のネズミザメ(Lamna ditropis)をアラスカ湾で捕え、体内のさまざまな部位の温度を測定した。その結果、泳ぎ続けるためのエネルギー発生源であって、体芯部に位置する「赤筋」の温度は最高26℃にもなり、これは周囲の海水温よりおよそ20℃も高かった。そして、この筋肉は、海水温より10℃も高い場合でもその働きが最大50%まで低下することがわかった。 今回の発見は、ネズミザメがその活発な捕食行動に関して、いかに特殊化しているかを示しているとShadwickたちは述べている。泳ぐ際に赤筋が効率よく働くのは、筋肉の収縮時に発生する熱に依存しているからである。赤筋の温度が周囲の海水温度近くまで低下してしまうと、ネズミザメは泳ぎ続けることができなくなるらしい。これとは対照的に、遊泳速度を瞬発的に高める力を増す「白筋」は、広い温度範囲で問題なく働くと研究グループは述べている。