Nature ハイライト 物理:ネットワークもフラクタル 2005年1月27日 Nature 433, 7024 自然、社会そしてテクノロジーに見られる多様なネットワークは「スケールフリー」、すなわち、ネットワークノードをつなぐリンクの数の平均値がうまく定義できないことが知られている。このようなスケールフリーな構造は、人の交友ネットワークや共同科学研究ネットワーク、ワールドワイドウェブ上の文書間ハイパーリンク、生体細胞中のタンパク質間の相互作用パターン、そして国際空港間の航空路線で見出されている。これらスケールフリーなネットワークの多くはよく知られた「小さい世界」の性質を持っているため、あるノードまで、他のほぼすべてのノードから極めて少数のステップで到達できる。今回H Makseたちは、このような複雑ネットワークがもう1つ重要な性質、自己相似性を持っていることを示した。これは、木の大枝や小枝一本一本の形状がその木全体と似ているように、ネットワークの任意の小部分がその全体とまったく同じに見えることを意味する。自己相似性はいわゆるフラクタル構造が持つ性質の1つである。フラクタル構造は、海岸線、山脈そして河川流域など多くの自然システムに見られる。この発見は、今までスケールフリーなネットワークが自己相似ではないと考えられていたことからすると意外な結果である。著者たちは、スケールフリーなネットワークの基礎となる自己相似性はくりこみと呼ぶ手法を使って確認できることを示した。この手法ではネットワークに次々と「粗視化」する近似を行う。これは、ネットワークを見るとき目を細める程その詳細がよりぼやけて見えるということに似ている。この自己相似な性質は、複雑なネットワークがどのようにして成長し、スケールフリーな構造へと自己組織化していくか説明する上で有用になるだろう。 2005年1月27日号の Nature ハイライト 気候:分散コンピューティングで検証する温暖化予想 生体力学:ハエトリソウの葉がぱっと閉じる仕組み 地球:溶岩のジェットはガスの圧力で飛ぶ 宇宙:暗黒物質のハローに満ちた銀河系 物理:ネットワークもフラクタル 生態:ミジンコだって良き隣人が必要 : 目次へ戻る