Nature ハイライト 進化:現生人類のヨーロッパ移住を再考する 2004年11月25日 Nature 432, 7016 ヨーロッパにいたネアンデルタール人集団はおよそ3万5,000年前に忽然と消えてしまったのだが、これはどのようにして起こったのだろうか。考古学上の記録からは、彼らが姿を消したのはおそらく、初期人類のものに似た人工遺物(石器など)を製作したオーリニャック文化をもつ集団が突然やってきたためだと考えられている。しかし困ったことに、現生人類の骨の化石がオーリニャック文化に属すると思われる道具類といっしょに見つかることはめったにない。今週号のReview Articleでは、P Mellarsがヨーロッパのネアンデルタール人消滅の謎を再考し、現在得られている証拠を詳細に再検討している。いくつかの考古遺跡で現生人類の骨格化石が見つかったことからは、突然の侵入によってネアンデルタール人が圧倒されてしまったことがうかがえる。他の遺跡で見つかった進歩した技術は、解剖学的な意味での現生人類が存在したことを示唆している。Mellarsは、放射性炭素年代測定でこうした遺跡を関連づける難しさについて考察しているが、それでもやはり、実際にネアンデルタール人を駆逐したのはオーリニャック文化をもった人々と考えることが大勢のようだ。証拠からすると、現生人類が2つのルートでヨーロッパに移住した様子が浮かび上がってくる。1つは特徴的な道具類の分布と一致したルートで、もう1つは主に地中海沿岸に沿ったルートである。このモデルは、解剖学的な意味での現生人類とネアンデルタール人がさまざまな場面で接触し、生活域や資源をめぐって直接の競争が起こったことを物語っているとMellarsは述べている。そして彼は、現生人類が競争でどういうわけで優位に立ったのかを考察し、より複雑な言語を編み出したことが適応上の決定的な優位性となったのではないかと推定している。 2004年11月25日号の Nature ハイライト 医学:壊れた心臓を修理する 量子物理:光の量子メモリー 進化:現生人類のヨーロッパ移住を再考する 材料:透明エレクトロニクス用の新しい材料 進化:トカゲが見せてくれた複雑な自然選択 宇宙:結晶が集まってできた惑星 目次へ戻る