Nature ハイライト
構造生物学:クラスB完全長GPCRの構造
Nature 546, 7657
グルカゴン様ペプチド1受容体(GLP-1R)とグルカゴン受容体(GCGR)はGタンパク質共役受容体ファミリーのクラスBに属し、グルコース恒常性とインスリン放出について相反する生理的役割を担っている。そのため、これらは代謝や食欲の調節に重要であり、2型糖尿病の治療に利用できる可能性が非常に高い。しかし、これらの受容体の完全長構造はまだ解明されていなかった。今週号にはGLP-1RとGCGRの構造に関する4つの論文が掲載されている。G Skiniotis、B Kobilkaたちのグループは、修飾を加えていないGLP-1Rが、その内在性ペプチドリガンドであるGLP-1およびヘテロ三量体Gタンパク質と複合体を形成した状態の低温電子顕微鏡構造について報告している。F Marshallたちは、マウスへの経口投与で強力な活性を示した短縮型ペプチドアゴニストと複合体を形成した完全長受容体について、活性状態の構造を明らかにしている。また、B Wuたちは、不活性なコンホメーションをとった完全長GCGRの結晶構造を明らかにしている。さらに、R Stevensたちは、ヒトGLP-1Rの膜貫通ドメインについて、負のアロステリック調節因子と複合体を形成した不活性な状態の結晶構造を報告している。これらの4つの研究の結果は、クラスB受容体の活性化機構やシグナル伝達機構についての重要な考察をもたらすものであり、この受容体ファミリーを標的とする治療法の開発につながる可能性がある。
2017年6月8日号の Nature ハイライト
神経変性疾患:相転移が伸長したRNAを毒性化する
構造生物学:クラスB完全長GPCRの構造
物性物理学:平面世界の磁性
光物理学:光通信の大規模化
進化学:まれな移動個体が分岐選択を制限する
神経科学:一夫一妻制ハタネズミの社会的絆形成
がん:BCRシグナル伝達によってリンパ腫は競合で有利になる
遺伝学:タンパク質の状態をマッピングする