Nature ハイライト
進化学:まれな移動個体が分岐選択を制限する
Nature 546, 7657
自然選択は、異なる環境にある集団間で分岐を促す。これを分岐選択(DS)というが、自然選択にはもう1つ、負の頻度依存選択(NFDS)も存在する。これは、集団内においてまれな表現型が、ある特定の状況では選択優位性を持つというもので、例えばカエルの大集団では、カエルの姿に変えられた「王子」が大きな注目を集めることになる。DSとNFDSは、空間的および時間的に異なるスケールで生じるため、同時に研究されることはほとんどない。DSが複数の世代にわたる大きな選択の流れであるのに対し、NFDSは、例えば配偶者選択のような細かな局面に関係する。しかし、NFDSは分岐選択よりも強力なことがあり、場合によっては分岐選択と対立して作用することもある。今回D BolnickとW Stutzは、淡水型イトヨの集団でNFDSの影響を明らかにしている。湖沼で育ったイトヨを河川へ導入し、またその逆も行うという相互移植実験の結果、移入個体は数が少ない場合には生存率が予想をはるかに上回り、分岐選択を制限することが実証された。
2017年6月8日号の Nature ハイライト
神経変性疾患:相転移が伸長したRNAを毒性化する
構造生物学:クラスB完全長GPCRの構造
物性物理学:平面世界の磁性
光物理学:光通信の大規模化
進化学:まれな移動個体が分岐選択を制限する
神経科学:一夫一妻制ハタネズミの社会的絆形成
がん:BCRシグナル伝達によってリンパ腫は競合で有利になる
遺伝学:タンパク質の状態をマッピングする