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いまだに続く福島の放射能海洋汚染

原文:Natureオンライン掲載)|doi:10.1038/nature.2012.11823|Ocean still suffering from Fukushima fallout

Geoff Brumfiel

汚染水の流出と汚染された堆積物の影響で、海洋中の放射能レベルは依然高いままだ。

放射能に汚染された福島県沿岸の海産魚介類は、食品として摂取するには安全でないとされている。

NORIKO HAYASHI FOR THE WASHINGTON POST VIA GETTY IMAGES

東京大学で2012年11月12~13日にかけ開催された会議では、発電所周辺の放射能レベルが低下するどころか横這いであるという研究データが提示された。研究者たちによれば、発電所からの絶えず続く漏出に加え河川からの流出が原因の一部である。だが、汚染された堆積物と海洋生物も関連があるようだ。

この程度の汚染レベルが人体に害を及ぼす危険性は非常に少ないものの、三陸海岸の漁師たちには長期的な経済的影響が及ぶ可能性がある。

2011年3月、マグニチュード9.0の地震が日本沿岸を襲った。続けて巨大な津波が発生し、福島第一原子力発電所に押し寄せた。原子炉6機のうち、3機でメルトダウンが発生し、大量の放射能が大気中に放出された。事故発生後、非常用冷却水が海へと流出し、汚染が海洋に広まった。

この原発で海洋へと放出された放射能の量は、過去のどの例と比べても飛びぬけて多い。ウッズホール海洋研究所(米国マサチューセッツ州)の科学者が提示した新しいモデルでは、発電所から漏出した放射性セシウムの量は16.2 x 1016ベクレル(Bq)であると推測されており、これは大気中に放出されたのとほぼ同量である。

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その放射能の大部分が太平洋に拡散し、非常に低い濃度にまで希薄化した。しかし、発電所周辺の海洋では、セシウム137の量は1,000Bqのまま横這いであり、自然放射線量と比べると比較的高いレベルである。同様に事故から1年半が経過したものの、底魚から検出される放射性セシウムのレベルに変化はない。

3重の打撃

東京大学で開催された会議にて、科学者たちは放射能が横這いのまま低下しない現状の裏には原因があるはずだという認識に至った。「何か要因があるはずです」と、ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校の海洋学者である Scott Fowler は述べる。

実際、東京海洋大学の海洋学者である神田穣太が行なった研究結果では、3つの要因が関連している可能性があることが分かった。最初の要因は、降雨により陸地からの放射能が川へ流出し海へと押し出されることだ。2番目の要因として挙げられるのは、発電所自体から一ヶ月に0.3テラベクレル(TBq)の放射能が漏出していることだ。

「いつ漁業を再開できるかという簡単な問題に答えることができません。」

そして最後に汚染の主な原因として神田が挙げているのは、海底堆積物だ。約95TBqの放射能セシウムが発電所周辺の砂の海底に入り込んでいる。しかし、その到達経路は不明である。砂が直接吸収したかもしれないし、プランクトンなどの小さな海洋生物が放射能セシウムを吸収し排泄物をとおして海底に堆積させた可能性もある。河川からの有機堆積物もまた汚染の原因となっている可能性があると、神田は述べる。どのようにたどりついたかに関わらず、「堆積物中に有機物質が混じっていたに違いないのです」と神田は強調する。

プランクトンと堆積物。原因は何であれ、食物連鎖に汚染が入り込んでしまった。福島県周辺の底魚から検出された放射能のレベルは、日本政府が定めた規制の上限値の100Bqを超えている。例えば、アイナメからの検出量は最高で1キロ当たり25,000Bqに上る。しかし、汚染の程度は生物により大幅に異なる。タコやイカは汚染を免れたものの、キンメダイやスズキなどの魚からは時おりお汚染が発見される。全体的に見ると魚や海洋生物中のセシウム量は2012年秋から多少低下し始めたようであると、独立行政法人水産総合研究センターの海洋学者である渡辺朝生は述べている。

一方、漁業への経済的打撃は深刻だ。2011年の原発事故による損失額は、1,000億円とも2,000億円とも言われている。汚染が長引いているため、多くの漁業関連者が事業を停止した。「いつ漁業を再開できるかという簡単な問題に答えることができません」と述べるのは、ウッズホール海洋研究所の海洋学者である Ken Buesseler だ。

「この事故について理解するため、もっと様々なことを行なう必要があります」。Buesseler は、放射能が海洋に放出し続けている様々な原因と、異なる生物にどのように影響を与えているのかを突き止めるため、今後数ヶ月に渡り研究を続けたいと考えている。

(翻訳:野沢里菜)

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