Nature ハイライト
構造生物学:アレスチン複合体を捕捉する
Nature 579, 7798
Gタンパク質共役受容体は、その名前が示すように、主にGタンパク質を介してシグナルを伝達する。シグナル伝達に重要なもう1つのタンパク質のアレスチンは多様な役割を担っているが、構造学的解析はほとんど行われていない。それはおそらく、本来的に備わっている柔軟性のためだと考えられる。今回、GPCR–アレスチン複合体のクライオ電子顕微鏡法によって得られた構造が、2つの研究グループから報告された。R LefkowitzのグループとG Skiniotisのグループによる1つ目の論文では、脂質環境中でβアレスチン1と複合体を形成したM2ムスカリン受容体の構造が示されており、アレスチンの縁辺が脂質二重層と接触していて、これが複合体形成、アレスチンの誘導と受容体内在化に必須であることが明らかにされている。2つ目の論文はB KobilkaとG Skiniotisのグループからで、βアレスチン1と複合体を形成したニューロテンシン受容体の構造が示されている。この構造を、ロドプシン–βアレスチン1複合体の構造と比較すると、アレスチンは共通のシグナル伝達パートナーであるにもかかわらず、受容体に対して90°近く回転していることが観察され、アレスチンを基盤としたシグナル伝達の可塑性の高さが明らかになった。
2020年3月12日号の Nature ハイライト
電子デバイス:近藤遮蔽雲の観測
コンピューター技術:磁壁を使った論理回路
ナノスケール材料:グラフェンの(不)透過性の限界
地球化学:ルテニウム同位体によって制約される初期地球への揮発性成分の集積
微生物学:自然免疫の策略によって毒素が中和される
代謝:肝臓糖新生へのグルカゴン作用に関する新たな知見
腫瘍生物学:前転移ニッチを標的としたエピジェネティック療法
タンパク質合成:DNA修復キナーゼのこれまで知られていなかった役割
構造生物学:アレスチン複合体を捕捉する