Nature ハイライト
遺伝学:単一細胞分解能でのヒト肺の生物学的性質
Nature 587, 7835
単一細胞RNA塩基配列解読は、単一細胞での遺伝子発現のスナップショットを提供することにより、組織を構成する細胞タイプのカタログを作成したり、健康な状態と疾患におけるそれらの機能についての仮説を立てたりするための強力なツールであることが証明されている。M Krasnowたちは今回、3人のドナーの肺と血液から得た約7万5000個の細胞を単一細胞RNA塩基配列解読によって解析し、ヒト肺の新しい細胞アトラスを提示している。彼らは58の細胞タイプを明らかにしており、このうち14はこれまでに特定されていないものだった。著者たちはこの塩基配列解読データに基づいて、これらの細胞タイプの将来の研究のためのマーカーを示し、これらの細胞タイプの調節や他の細胞タイプとの情報伝達に関与する可能性のあるシグナル伝達経路を突き止め、呼吸器ウイルスのSARS-CoV-2、SARS、MERSの受容体を発現しているものなど、肺疾患の影響を受ける可能性のある細胞タイプを明らかにしている。まとめるとこの研究は、肺の研究者にとって貴重な情報資源となり、特定された細胞タイプとその生物学的性質についての将来の研究のための道を開くものである。
2020年11月26日号の Nature ハイライト
生物工学:ナノダイヤモンドを用いた量子診断プラットフォーム
ナノスケール材料:「暗い」励起子の明るい側面
気候科学:南極氷床の変動を増幅させる北半球の海水準変化
生態学:人工光と騒音は米国の鳥類の繁殖成功に複雑な影響を与える
遺伝学:ネアンデルタール人から受け継いだCOVID-19の遺伝的リスクバリアント
神経科学:脊髄再生におけるミクログリアの役割
遺伝学:単一細胞分解能でのヒト肺の生物学的性質
生化学:1つの遺伝子、複数の受容体
コロナウイルス:SARS-CoV-2の2つ目のプロテアーゼに関する知見
免疫学:cGAS–ヌクレオソーム複合体の高分解能クライオ電子顕微鏡構造