Nature ハイライト
微生物生態学:窒素を固定する海草の共生細菌
Nature 600, 7887
窒素に乏しい環境で生育する陸上植物は、分子状窒素(N2)を固定する共生細菌を伴っていることが多い。海草は、約1億年前に、海中へ戻った陸上顕花植物から進化したが、共生微生物の存在についてはこれまで報告がなかった。今回W Mohrたちは、海草の最初の共生体として細菌「Candidatus Celerinatantimonas neptuna」を発見し、その特性評価を行ったことを報告している。この細菌は、窒素に乏しい地中海に生育する海草Posidonia oceanicaの根の組織内に生息する。Ca C. neptunaは、N2固定能を有し、糖類と引き換えに宿主にアンモニアとアミノ酸を提供していることが示された。また、Ca. C. neptunaに近縁な細菌が世界各地の沿岸海域に存在することも明らかになり、窒素固定共生が、海草の繁茂を可能にしている一般的な機構であるとともに、顕花植物が窒素に乏しい海洋環境へと進出する際の移行に重要であったと考えられることが示唆された。
2021年12月2日号の Nature ハイライト
量子物理学:超流動体の渦を衝突させる
光物理学:光によって誘起された局所的メカニカルソリトン
生態学:マンモスステップの終わりの始まり
神経科学:意思決定における不確実性を解消する
微生物生態学:窒素を固定する海草の共生細菌
微生物学:微生物相による抗糖尿病薬の修飾
メンタルヘルス:COVID-19とメンタルヘルス
コロナウイルス:モデルに基づくSARS-CoV-2の潜在的な拡散の再構築
生化学:ALKの活性化
構造生物学:かゆみとアレルギーの受容体を見る