Nature ハイライト
微生物学:微生物相による抗糖尿病薬の修飾
Nature 600, 7887
抗糖尿病薬のアカルボースは、土壌細菌が産生するα-グルコシダーゼ阻害剤であり、ヒトの微生物相に対して直接的および間接的に副作用を及ぼすことが知られている。アカルボースに対する抵抗性機構があるかどうかについては不明であったが、M Doniaたちは今回、ヒト微生物相が、この薬剤を選択的にリン酸化して不活性化する酵素をコードしていることを発見したと報告している。彼らは生化学アッセイ、X線結晶学、メタゲノム解析を用いて、マイクロバイオーム由来のアカルボースキナーゼ群(microbiome-derived acarbose kinases;Maks)が口腔や腸の微生物相に広く分布しており、アカルボースの糖質依存的増殖抑制作用からMaks産生細菌を保護することで、微生物相の動態を変化させていることを明らかにした。ヒトの臨床試験データの予備的解析でも、Maksがアカルボースの臨床効果を低下させる可能性があることが示唆されているが、これを実証するためには、大規模なヒトコホートでのさらなる縦断的研究が必要である。
2021年12月2日号の Nature ハイライト
量子物理学:超流動体の渦を衝突させる
光物理学:光によって誘起された局所的メカニカルソリトン
生態学:マンモスステップの終わりの始まり
神経科学:意思決定における不確実性を解消する
微生物生態学:窒素を固定する海草の共生細菌
微生物学:微生物相による抗糖尿病薬の修飾
メンタルヘルス:COVID-19とメンタルヘルス
コロナウイルス:モデルに基づくSARS-CoV-2の潜在的な拡散の再構築
生化学:ALKの活性化
構造生物学:かゆみとアレルギーの受容体を見る