Nature ハイライト
Cover Story:脳からの排液:髄膜リンパ管による脳脊髄液からの老廃物除去の障害が認知機能の低下と関連付けられた
Nature 560, 7717
リンパ管は、体組織が生み出す細胞残屑や有害分子などの老廃物を除去する作業を行っている。J Kipnisたちは今回、脳もこうしたシステムを使っていて、脳脊髄液中の巨大分子老廃物を移動させて、髄膜(脳を包む膜)にあるリンパ管を通して排出することを明らかにしている。彼らは、正常マウスでは、髄膜リンパ系が損なわれると、認識機能が低下することを見いだした。また、加齢によってリンパ系が損傷し、リンパ系の機能を修復すると、「脳の老廃物除去能」が回復し、記憶力が向上することも示された。さらに、アルツハイマー病マウスモデルを用いて、髄膜リンパ管が破壊されると、アミロイドβタンパク質が排出されにくくなって脳に蓄積され、アミロイド病変が悪化することも明らかになった。著者たちは、髄膜リンパ系の衰えを標的にすれば、加齢に関連する認知機能障害と闘うのに役立つ有用な治療手段となる可能性があると述べている。
2018年8月9日号の Nature ハイライト
量子物理学:強い状態を保つスピン–光子結合
寄生虫学:内臓リーシュマニア症の新しい治療選択肢
免疫学:NLRP3インフラマソームの活性化はミトコンドリアDNA合成に依存する
材料科学:グラフェンナノリボンを用いたトポロジー制御
地球化学:キセノン同位体によって明らかになったマントルへの揮発性物質循環の歴史
進化学:頭蓋プラコードと神経堤は共通の進化的起源を持つ
生態学:全球の土壌マイクロバイオーム
免疫学:ミトコンドリアRNAの自己認識
遺伝学:狙った標的を改変するEvolvR
細胞生物学:作用中のダイナミン
分子生物学:哺乳類ミトコンドリアでの翻訳開始機構についての手掛かり