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プラズマ物理学:レーザー核融合実験の統計的手法

Nature 565, 7741

慣性閉じ込め核融合(ICF)では、ドライバー(強力なレーザービームであることが多い)によって、重水素と三重水素(DT)の固体ペレットを超高温高密度に圧縮して、核融合反応を引き起こす。レーザーパルスを適切に設定すれば、この爆縮段階で生じる衝撃波がペレットの中心部へ集中し、最終的に点火して高密度の燃焼プラズマが生じる。レーザー核融合を通した点火は、実験条件が複雑なだけでなく、モデリング性能が限られているため、まだ実証されていない。さまざまな標的仕様とレーザーパルス形状を用いたICF実験の結果は、パラメーター空間が大きいため、爆縮性能を改善する反復設計の方法論が可能になるレベルまで予測するのは難しい。今回V Gopalaswamyたちは、不正確なシミュレーション出力からより正確な性能予測を得る統計的手法を示している。その出発点はだまされたと思うくらい簡単である。すなわち、ICF爆縮の設計に使ったシミュレーションコードの結果は、不正確かもしれないが、実験の観測可能量とコードの出力変数は同じ入力パラメーターを共有しているため、統計的に相関しているに違いないということである。この方法をOMEGAレーザー施設のDT爆縮の予測と設計へ適用すると、核融合収率が高くなることが示され、米国立点火施設で利用可能なレーザーエネルギーではさらに高い収率が達成できる可能性があることが示唆された。この種の予測手法は、熱核融合点火に向けたさらなる進歩の指針になると期待される。

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