Nature ハイライト

古人類学:デニソワ洞窟の中で

Nature 565, 7741

今回、放射性炭素年代測定が行われた、デニソワ洞窟の後期旧石器時代の層に由来する骨製の尖頭器と歯のペンダント。
今回、放射性炭素年代測定が行われた、デニソワ洞窟の後期旧石器時代の層に由来する骨製の尖頭器と歯のペンダント。 | 拡大する

Credit: Katerina Douka

シベリア南部のアルタイ山脈にあるデニソワ洞窟は、新たなヒト族集団「デニソワ人」の骨片が見つかったことで有名である。このヒト族集団の記録はこの遺跡でしか発見されていないが、発掘された骨や歯の数がわずかであるにもかかわらず、骨片そのものや周囲の堆積物から回収されたDNAからはゲノム規模の塩基配列が明らかになっている。デニソワ洞窟ではまた、デニソワ人と極めて近縁なネアンデルタール人の骨片の他、上層からは、現生人類のものと考えられる人工物も発見されている。デニソワ洞窟は大きく複雑であるため、ヒト族が居住した時期を確定することは容易ではなかった。今回Z Jacobsたちは、光ルミネッセンス年代測定法を用いてデニソワ洞窟の編年を確立し、この洞窟における約30万~2万年前の環境的状況を再構築している。一方、K Doukaたちは新たに得られた50の放射性炭素年代測定値を報告している。新たに3点のデニソワ人化石(うち1点はミトコンドリアDNAを伴う)が見いだされ、デニソワ人がこの洞窟に存在していた年代が約19万5000~5万2000年前と推定された。骨製の尖頭器および歯のペンダントの放射性炭素年代測定からは4万9000~4万3000年前という較正年代が得られ、これはユーラシア北部で知られる人工物としては最も古く、デニソワ人がその製作に関与していた可能性が示唆された。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度