【寄生虫学】ボルバキア菌が蚊のマラリア原虫感染を抑制する過程
Nature Communications
2016年6月1日
ハマダラカは主要なマラリア媒介生物であるが、ボルバキア菌に感染したハマダラカが、その体内のマラリア原虫の少なさと相関していることを報告する論文が掲載される。この新知見は、ボルバキア菌がマラリア伝播に重要な役割を果たしていることを示唆しており、ボルバキア菌を利用することがマラリアの広がりを減らす方法となりうることを裏付けている。
ボルバキア菌は、多くの昆虫に自然感染して、その生理機能と繁殖に影響を及ぼすため、デング熱ウイルス、ジカウイルスやマラリア原虫(Plasmodium)などの病原体を伝播する蚊の集団を駆除するために利用できる可能性があるという考え方がずっと以前から提唱されている。しかし、細菌を用いてマラリアの拡大を抑えるという方法は十分に検討されていなかった。
今回、Flaminia Catterucciaたちは、マラリア負荷の高い国の1つであるブルキナファソで2011~2014年に600匹以上のハマダラカを採集し、(採集年により)19~46%がボルバキア菌株の1つであるwAngaに感染していたことを発見した。また、Catterucciaたちは、ハマダラカの卵と幼虫を採集して、研究室内で繁殖させ、wAngaに感染したハマダラカが非感染個体より早く産卵することを明らかにした。さらに、221匹の雌のハマダラカがマラリア原虫とボルバキア菌に感染しているかどうかを調べたところ、12匹がマラリア原虫に感染し、116匹がボルバキア菌に感染していた。(マラリア原虫感染率は約5%で、過去の複数の研究結果と合致している。)マラリア原虫とボルバキア菌の感染検査の結果がいずれも陽性だったのはわずか1匹だった。
今回の研究の結果は、現在のところボルバキア菌によってマラリアの伝播が自然に抑制されているとする仮説と合致している。しかし、他の地域でハマダラカのマラリア原虫とボルバキア菌の同時感染の頻度が低いことを確認し、その基盤となる機構を明らかにするには、さらなる研究が必要となる。
doi:10.1038/ncomms11772
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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