Research Press Release

考古学:狩猟採集民がマルタに向けて出帆

Nature

2025年4月10日

現生人類がマルタ島に到達したのは、これまでの考えよりも早く、約8,500年前のことだったことを報告する論文が、Nature に掲載される。マルタ島にいた中石器時代の狩猟採集民の一団が、地中海を渡って島に到達した可能性があり、これは地中海における狩猟採集民の海を渡った最長記録となる可能性がある。この発見は、これまでの考古学的証拠よりも古く、これらの狩猟採集民は、これまで考えられていたよりも技術的に進んでいた可能性があることを示している。

マルタ島は地中海で最も離れた島の一つであり、シチリア島の沿岸から約100キロメートル離れた場所に位置している。シチリア島とは、1万3,000年前に沈んだ陸橋によってつながっていたと推測されている。マルタ島は小さく離れた場所にあるため、農業が導入され、より高度な航海技術が開発される以前には、人間の居住を支えるには不適であると考えられていた。これまでにマルタで確認されていた遺跡は、新石器時代の農耕民が約7,400年前にこの島に最初に到達したことを示していた。

Eleanor Scerriらは、マルタ北部のメリーハ(Mellieħa)地域にあるラトニヤ(Latnija)遺跡から、島に中石器時代の狩猟採集民がいたことを示す証拠を発見した。2021年から2023年にかけて行われた発掘調査では、石器、炉、灰の破片、そして海棲哺乳類、腹足類、および魚類などの野生動植物の化石が堆積物から発見され、年代は8,500年から7,500年前と推定された。この時代、マルタの地形や海面は現在とほぼ同じであったと考えられ、著者らは、島に到達するにはシチリア島から約100キロメートルの航海が必要だったと推測している。

Scerriらは、この発見により、この地域の狩猟採集民の技術的能力について再考する必要がある可能性を示唆し、未知のつながりの可能性を提起している。

Scerri, E.M.L., Blinkhorn, J., Groucutt, H.S. et al. Hunter-gatherer sea voyages extended to remotest Mediterranean islands. Nature (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-08780-y


 


 

doi:10.1038/s41586-025-08780-y

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