【健康】早期の血流阻害がアルツハイマー病と結びついている
Nature Communications
2016年6月22日
さまざまな脳領域に送られる血液の量の変化が、遅発性アルツハイマー病に関連する最も早期の因子の1つであることを示唆する研究結果について報告する論文が、このたび掲載される。
ヒト認知症の最も一般的な形態である遅発性アルツハイマー病の場合には、特定の一意的な機構ではなく、同時に発生すると考えられる複数の因子が原因として関与している。アルツハイマー病の一因が血流の阻害である可能性については、1900年代初頭から論じられており、アルツハイマー病の進行を調べたマウスの研究では、脳血流の早期の変化が報告されていた。
今回、Yasser Iturria Medinaたちは、多因子的な手法を用いて、健常者とアルツハイマー病患者(合計1,171人)のデータベースに登録されている脳画像データと血漿と脳脊髄液のサンプルを比較した。その際にMedinaたちは、被験者のデータを重症度の診断に従って、健常対照者、初期と後期の軽度認知機能障害、アルツハイマー病に分類して、この病気の進行の程度を追跡観察した。研究対象となった数多くの因子の中で、アルツハイマー病の進行過程における早期の変化の1つが血流で、全ての脳領域と全ての時点で異常が見られた。また、血漿と脳脊髄液のサンプルの比較では、アルツハイマー病の進行過程のさまざまな時点で、血管調節に関連する複数のタンパク質(例えばアポリポタンパク質AとIP-10)の数が変動していたが、これらのタンパク質が患者の血管の変化の一因であるのかどうかは明らかになっていない。
以上の結果は、血流の変化と疾患の進行が相関していることを明らかにしているが、脳血流の変化がアルツハイマー病の進行に寄与しているのかどうか、どのように寄与しているのか、といった論点を解明するには、さらなる研究が必要だ。
doi:10.1038/ncomms11934
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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