【動物行動】アリの分業はどのように生じたのか
Nature
2018年8月23日
アリの群れにおける有益な分業は、コロニーが大きくなると生じ、わずか6匹いれば分業が始まることを報告する論文が、今週掲載される。この研究知見は、複雑な社会性が出現する過程についての我々の理解を深めている。
作業を遂行する際に分業をして効率を高めることができるというのは、集団生活の大きな利点であり、人間社会の特徴の1つだ。これよりもさらに精緻な分業が社会性昆虫のコロニーで見られ、専門化した身体的に異なる社会階級の間で作業が分担されている。生殖能力のある女王バチ・雄バチと生殖能力のない雄の働きバチが、その1例だ。しかし、社会性昆虫の祖先が個々に生活していたところからこの分業が最初に生じた過程については、これまで解明されていなかった。
今回、Daniel Kronauerたちの研究グループは、小さな群れで生活するクビレハリアリ(Ooceraea biroi)の100個のコロニーを調べた。クビレハリアリのコロニーには女王アリはおらず、全てのアリがよく似た働きアリで、皆で繁殖を行う。このコロニーの繁殖期には、アリたちは最も活発になり、食料を集めるアリと幼虫の世話をするアリに分かれる。Kronauerたちは、クビレハリアリに油性マーカーで印を付け、繁殖期のアリの動きをデジタルカメラで追跡観察した。
Kronauerたちは、コロニーに少なくとも6匹のアリがいれば分業が生じ得ることを明らかにした。そして、コロニーを形成する個体の数が増えると、それぞれの働きアリが活動に対する専門性を高め、コロニーにおける行動の多様性が増した。さらに、それぞれの個体ごとのコロニーへの適応度(生存率、繁殖レベル、発育のタイミングなど)も上昇した。
doi:10.1038/s41586-018-0422-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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